『装甲車型メカ鉄獣(6)』

『健!メカ鉄獣のタイヤの跡があるわ。
 もう出動したのではないかしら?』
『やられたぞい。
 おら達が潜入する前に出たんだわ』
「くそぅ。やっぱりそうか……」
「南部博士に連絡だ」
健が博士とブレスレットで連絡を取った。
『何?まだメカ鉄獣出現の報告は入っていないぞ』
「まさか、ゴッドフェニックスが!」
『すぐに戻るんだ!』
「ラジャー!」
健は答えて、そのまま全員に言った。
「聞いての通りだ。至急ゴッドフェニックスまで帰還する」
『ラジャー』
全員の答えがあった。
「ジョー、此処まで来ておいて悔しいが、メカ鉄獣が先だ」
「解ってるって」
答えたジョーはもう走り始めていた。
途中で機関室を爆破した甚平と逢い、3人はそのまま先程入った出口へと向かった。
ジョーは砲門を何とかしたかったが、ゴッドフェニックスが危機に陥っているかもしれない時に、それに取り掛かっている余裕はなかった。
内心で舌打ちをしながら、ゴッドフェニックスへ帰る事になった。
装甲車型メカ鉄獣が通った跡には地割れが出来ている。
気をつけなければ、氷が割れるかもしれない。
だから敵は地下から帰還したんだ、とジョーは気づいた。
地割れの跡は確かにゴッドフェニックスを着陸させた地点へと向かっている。
「くそぅ。此処にG−2号機があれば!」
「G−2号機があった処で、バードミサイルが敵わない敵にどうやって攻撃する?」
健は冷静だ。
「コンドルマシンで足止めぐれぇは出来るだろ?」
「だが、それだけだ」
健は冷たく答えた。
確かにその通りだ。
だが、何とか起死回生を狙いたい。
『ジョー、G−2号機に特殊弾を装備したい。
 何とか帰還出来ないか?』
南部博士から通信が入った。
「今、ゴッドフェニックスが装甲車型メカ鉄獣に襲われようとしています。
 まずはそいつを逃れないと……」
『うむ。それは解っている。
 全員全速力でゴッドフェニックスに向かい、上空に退避せよ。
 再び基地へ帰還するのだ』
「またですか?博士〜」
甚平が言った。
『バードミサイルは間に合わないが、G−2号機への追加装備なら可能だ。
 現時点で出来る事はそれしかない』
「解りました。何とか切り抜けて基地に帰還します」
『全員、気をつけてな』
「ラジャー」
科学忍者隊は5人揃った。
健、ジョー、ジュン、甚平、竜の順に岩陰から飛び出し、走り始めた。
「あの装甲車は動きは鈍い。何とか俺達で先手を打つんだ」
ジョーが言った。
その時、カニ型ブルドーザーが出撃して来たのが見えた。
「どうやら追手が来たようだ」
と健。
「あれを戴こうじゃねぇか!」
ジョーはパッと閃いた事を言った。
「それはいい!装甲車よりも先にゴッドフェニックスに到着出来るかもしれない」
健が頷いて、全員は散った。
それぞれにカニ型ブルドーザーを奪うべく、闘い始める。
ジョーはカニ型ブルドーザーによじ登り、ハッチを開けてエアガンを中の操縦士に向けた。
簡単にジャックする事が出来た。
彼は中に入り込み、操縦士を外に投げ捨てた。
1人乗りだった。
他のメンバーも同じような要領でカニ型ブルドーザーを乗っ取り、先へと進んだ。
「動きは鈍(のろ)いが、走って行くよりはマシだろう」
ジョーには苛立つような遅いスピードだったが、装甲車に気づかれないように遠回りをしても、先にゴッドフェニックスまで到達する事が出来た。
全員がトップドームへと跳躍する。
ゴッドフェニックスはすぐさま垂直上昇した。
「敵の装甲車の中で悔しがっているのが見えるようだな」
「ジョー、安心するのはまだ早いぞ。
 射程距離が伸びた可能性もある」
「そうだな…。竜、スクリーンに拡大してくれ」
ジョーは新しくなったと思われる装甲車型メカ鉄獣の砲門を見たがった。
「砲門の入口にギザギザがあるのは、基地の物と一緒だな。
 あれは最初の時には付いていなかった」
さすがはジョーだ。
違いをすぐに見抜いた。
「問題は砲弾だな。ウランを積んでいるとなると厄介だ。
 南部博士が開発したのは、恐らくは冷凍弾だろうぜ」
ジョーは今までの経験からそう言った。
「俺にはそれしか考えられねぇ。
 南部博士の事だから、もっと凄い物を開発しているかもしれねぇがな」
「いや、これだけの時間で開発したんだ。
 それ程大仰な物は作れまい。
 G−2号機のガトリング砲に合わせた銃弾と言う事を考えても、ジョーの考えは遠からず当たっているだろう」
健が言った。
「装甲車型メカ鉄獣はその武器で何とかなるかもしれねぇが、基地の方の大きな砲門はガトリング砲ではどうにもなるめぇ」
「それは南部博士が考える。
 恐らくは巨大な同じ物を国連軍の空軍に撃ち込ませる手配はしているだろう」
「撃ち込む前にやられなけりゃいいがな」
「それは俺達が基地の中から砲弾を抜いて、爆発物を仕掛ける事で解決じゃないか」
「砲弾を抜くったって、簡単には行かねぇぜ」
健とジョーとの会話が続いていた。
とにかくゴッドフェニックスは再び三日月基地への帰還ルートを辿った。

ジョーのG−2号機に追加装備されたのは、ジョーの考え通り、冷凍弾だった。
装甲車型メカ鉄獣全体を凍らせてしまう程の威力があると言う計算だ。
「ジョー、素早く発射しなければ、G−2号機も君自身も凍ってしまうぞ。
 つまり、撃つ直前にシリンダーに弾を装填しなければならない、と言う事だ」
「解りました。何発あるのですか?」
「3発しか作れていない。
 大型の物にも取り掛からなければならなかったからな」
「3発……」
「ジョー、行けるか?」
健が訊いた。
「G−2号機を地上に下ろせば行けると思う」
「だが、それは危険だぞ!」
「解っているが、空から狙うのはとても無理だ。
 敵は鈍いとは言っても、小回りが利く装甲車だぞ!」
ジョーはギリっと歯を噛み締めた。
「解った。危険だが、やって貰うしかないな」
「やってやるさ。博士、凍らせた装甲車はどうするんです?」
「ウランが積まれている以上、国連軍に処置を頼むしかあるまい」
「国連軍の手を借りるのは不本意ですが、仕方がありませんね」
ジョーは言った。
「ジョー、必要な時はどこの手も借りる。
 それも重要な俺達の任務だ」
健が言った。
「解ったよ」
ジョーは少し捻たように答えて、博士が取り出した3発の弾丸が入った箱を受け取った。




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