『装甲車型メカ鉄獣(8)』

ベルク・カッツェから乱れた画像で通信が入ったのはその時だった。
電波ジャックをしたのか、いつも南部博士が現われる小さなスクリーンにカッツェの姿が現われた。
『くそう。よくも装甲車型メカ鉄獣を使えなくしてくれたな。
 コンドルのジョー君。
 あの洗脳怪光線を一瞬でも浴びて、良く無事に帰れたものだ。
 正直言って感心しておる』
健達が一斉にジョーを見た。
ジョーは「この眩暈はそのせいか…」と呟いただけで、特に異常があるようには見受けられなかった。
「残念だったな。俺は一瞬光を見ただけだ。
 だから、視神経に何かトラブルでも起きているんだろう。
 だが、洗脳はされてないぜ」
『残念だが、どうやらそのようだな』
カッツェは忌々しげに唇を曲げた。
『だが、どうかな?これから我々の基地に潜り込むつもりだろうが、あの怪光線をもう1度浴びたら、一番最初におかしくなるのは、間違いなくお前だ。
 覚えておくがいい!』
カッツェは捨て台詞を吐いて消えた。
ジョーは激しい眩暈の為に、膝を着いた。
「ジョー、大丈夫?」
ジュンが心配して覗き込んだ。
「ああ、眩暈はすぐに収まるだろう。
 それより視野が狭まって来た。
 だが、見えなくても俺は闘える。
 気にする事ぁねぇ……」
「ジョー。国連軍にも注意を促さなければならない。
 お前だからこの程度で済んだが、国連軍がそれを浴びたら、洗脳されてゴッドフェニックスに冷凍特殊弾を向けないとも限らない」
健は冷静だった。
「そう、だな…。南部博士に連絡しろよ。
 その冷凍特殊弾をバードミサイルに変える事は無理なのか訊いてみろ」
「出来るのならとっくにやっているだろう」
健は言ったが、そのまま南部博士に通信した。
『そうか…。残念ながらバードミサイルに組み込むのは無理だ。
 ただ、ジョーのG−2号機に組み込める特殊弾なら追加分が完成している』
「その特殊弾であの巨大な砲門を凍らせる事など出来ますか?」
『理論的には連発すれば可能だ』
「しかし、ジョーは敵の洗脳怪光線の影響で眼をやられています。
 視野が狭まっている。
 その状況でもしもまた怪光線を浴びると危険です」
『特殊ゴーグルを用意した。
 甚平、済まないが特殊弾とそのゴーグルを取りに来てくれるか?』
甚平は今日は何て忙しい日なんだ、と内心で思ったが、文句は言わなかった。
「ラジャー」
すぐに出た。
『ジョーは少し眠らせてやりなさい。
 出来れば冷やしたタオルで目隠しするといい』
「解りました」
健はジョーに変身を解くように告げ、自席に座らせた。
ジュンが濡れたタオルを持って来て、ジョーの眼の上に置き、その上から黒い布で目隠しをした。
「こんな事で症状が改善するのだろうか?」
健が呟いたが、
「博士が言う事ですもの。少しはジョーも休まるのでしょう」
とジュンは答えた。
「ジョー、甚平が戻るまで少しでも眠れ。
 その後はノーズコーンから大役を務めて貰わねばならない」
「解ってる……。眼が見えなくても闘えるが、銃撃となると訳が違う。
 上手く行けばいいんだがな」
ジョーも不安を隠し切れなかった。
甚平が博士から預かって来る特殊ゴーグルがどの位役に立ってくれるのか、未知数だった。
新たな怪光線は防げるだろうが、今の症状を和らげるものではない事は、ジョーが一番良く解っている。
少しでも眠る事にした。
視界は真っ暗だ。
眠るのには丁度いい。
座席の座り心地は悪かったが、闘いが続く時は此処で仮眠をする事もある。
ジョーは構わずに周りとの接点を解除した。
周りの話し声などを聴かないように意識したのだ。
やがて眠りに落ちた。
「ジョーは眠ったようだな…」
健が囁いた。
「こう言った作戦になると、ジョーにばかり負担が掛かるのが俺としては悔しい。
 ジョーにはプレッシャーの掛けっ放しだ」
「だがのう。特殊弾となるとどうしてもG−2号機の負担になるのは仕方がないと思うわ〜」
竜が慰めるように言った。
「そうよ。ガッチャマンファイヤーには装備出来ないでしょう?」
ジュンも言った。
「それは解っているんだが…。
 どうしても特殊弾となるとG−2号機に頼らざるを得ない事もな」
健は目隠しをして眠っているジョーを振り返った。
「ジョーはプレッシャーに負けるような男ではない事は解っている。
 ただ、身体の負担が大きいのではないか、とふと不安になるんだ」
「それは解るわ。今だって視野が狭まっていると言っていたけれど、それだけとは限らない。
 ジョーが不調を隠している可能性だってあるわ」
「眩暈があったじゃろう?あれだって収まった訳じゃあるまいに」
竜も言った。
「洗脳怪光線の影響が視野の欠損と眩暈だけで済んだのは不幸中の幸いと言ってもいいかもしれない。
 だが、これからまた重要任務がジョーに課せられると思うとな……」
健は気掛かりでならないと言った顔をした。
「ジョーはきっちりやるわよ。
 心配なのは、終わった後、今の症状が残らないかどうかね」
「ああ。眩暈もそうだが、特に視野欠損は重大だ。
 いくらジョーが暗闇でも闘えるように自身に訓練を課していたとしても、科学忍者隊としては……」
健は言い淀んだ。
『失格者』となるのだ。
ジョーは科学忍者隊から外される事になるだろう。
「今の俺には一時的な症状である事を祈るしかない……」
健は呟くように言った。
その時、甚平が戻って来た。
「よいしょっと!重いぜ、この特殊弾!」
大きな箱を持っていた。
「シーっ!」
ジュンが唇の前に指を立てたが、ジョーは眼を覚ました。
自分で目隠しを取る。
「特殊弾が来たのか?」
「ああ、500発入ってるって!」
甚平が答えた。
「これを装填したらすぐに奴らの基地へ向かわねぇと…」
ジョーが言った。
「はい、これが特殊ゴーグル」
甚平が黒いゴーグルを渡した。
「こいつは、標的が見辛いな」
ジョーは難色を示した。
「でも、これをしないと、新たに怪光線を浴びた時にどうなるか解らないってよ!」
甚平は真剣な顔をして喰い下がった。
「解ったよ……」
ジョーは甚平の頭を撫でた。
「やってやるさ」
「ジョー。具合はどうなんだ?」
「大丈夫さ」
ジョーはそれしか答えなかったが、視界は戻っていなかったし、眩暈も続いていた。
精密に狙う必要はない。
巨大な砲門を500発の弾丸で狙い撃ちすれば良いのだ。
この眼でも何とかなる。
ジョーはそう踏んでいた。
「バードGO!」
ジョーはゴーグルをしてからバードスタイルに変身した。
「竜。俺がいいと言ったら、ノーズコーンを開いてくれ。
 それまでに敵地の上空に辿り着いていてくれ」
「ラジャー」
ゴッドフェニックスは敵の基地に向けて進み始めた。




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