『ギャラクター本部発見す(2)』

「そこを本部だとする根拠は?」
冷静な健が訊いた。
「ええい、うるさい!ヒック!
 根拠などないわ!
 だが、俺には確信がある。ヒック!」
言葉尻にしゃっくりが混じる。
南部博士は少し顔を顰めていた。
それでなくても、近くにいる南部博士は酒臭い彼の臭気に包まれている筈だった。
アレックスは腰に付けてある紐を解いた。
ウィスキーの小瓶を手に取る。
「南部博士の前で飲酒する気か?」
ジョーが言ったが、南部がまあまあ、と止めた。
「これを飲まないと体調が悪くなるのだ」
「飲んでいるから体調が悪いんじゃねぇのか?」
ジョーは訊いたが、無視された。
「それで、根拠がねぇとは、どう言う事だ?」
ジョーは懲りずに健の質問を繰り返した。
「そのままさ。俺には根拠など必要ない。
 この頭が感じた事が全てだ。
 あの基地はギャラクターの基地としては、基幹部分を受け持つ巨大な基地だ。ヒック!
 本部若しくはそれに近い基地だと言ったのは、これでも俺が慎重な発言をしているからだ。
 本当は本部だと確信している。ヒック!」
またしゃっくりが入った。
「アレックス……」
「ジョー」
健が止めた。
「いくら何でも国連軍の中佐の地位にある者をアレックスと呼ぶ訳にはいかないだろう。
 此処は『バディ中佐』が適当だ。
 俺達はそう呼ぼう」
健が言った。
「解ったぜ…。では、バディ中佐。
 その基地の場所はどこにあるってんだい?」
「それはこれから説明する。
 この画面を見たまえ」
アレックスは南部博士が用意したスクリーンに、自分のタブレット端末の画面を映し出した。
既に南部博士に見せた時にセッティングしてあったのだろう。
寂れた村の写真が映った。
家々は点々と存在し、緑が全くない。
土の色だけが画面に拡がっていた。
「この寒村の地下数百メートルの場所に、知られてはいないが、大量の金塊が眠っている。ヒック!
 ギャラクターはそう言う場所を好むから、全くの勘だったが、俺は地下まで潜入してみた。
 潜入は井戸から試みた。
 すると、地下にはギャラクター隊員がいたって訳だ。ヒック!」
酔っ払いにしては、此処まではしっかりした事を言っているな、とジョーは思った。
健を見ると、腕を組んでスクリーンを凝視している。
今は井戸の写真が映っているが、その先の写真を早く見たい。
アレックスはタブレット端末を操作した。
ギャラクターの隊員が確かに映し出された。
「これが最初に遭遇したギャラクターの隊員だ。
 侵入した事をばらす訳には行かないからな。ヒック!
 こいつを倒さずに密かに潜入するのには骨が折れた」
写真が変わった。
広い工場のような空間が拡がっており、いくつものメカ鉄獣の姿が見える。
「此処がメカ鉄獣の工場兼倉庫となっている。
 10体のメカ鉄獣が待機していた。
 ギャラクターは既にそれだけの準備をしていると言う事だ!ヒック!」
アレックスの瞳は怒りに燃えていた。
そこに、ジョーは自分と同じ光を感じ取った。
レニック中佐が言った事は本当だったのだ。
ギャラクターに妻子を殺され、特にメカ鉄獣に対する怒りは半端ではない事だろう。
「残念ながら、こいつら一体一体の写真は撮る事が出来なかった。
 無事に帰る事が絶対条件だったからな。
 でなければ、この事を誰にも伝えられない。
 レニックに頼んで、南部博士への渡りを付けて貰った。ヒック!」
(そう言う事だったのか……)
ジョーはレニックが自分の処にやって来た事情を理解した。
恐らくはジョーに言った事と同じ事を、南部博士にも告げたのだろう。
いきなりこの酔っ払いを逢わせたとして、信用を得られるかと言えば、否定の色が濃い。
「写真はまだある。これを見ろ」
地対空ミサイルが山肌から少しだけ顔を覗かせていた。
「位置から割り出すと狙っているのは、火星だ。
 何を意味するか解るかね?ヒック!」
「火星を爆発させて、地球も巻き込もうとでも?」
健が言った。
「その通りだ。地球には大規模な被害が及ぶに違いない。
 これだけの装備をしている基地だ。
 本部である可能性は90%以上ある」
「10%は違う可能性もあると言う事だな」
ジョーが言った。
「本部に匹敵する機能を持つ第二基地である可能性は否定はしない。ヒック!」
アレックスはまた腰からウィスキーを取り出し、グビグビと喉に流し入れた。
口から溢れたウィスキーが喉を伝っている。
南部博士がポケットチーフを差し出したが、アレックスは構わずに自分の腕でそれを拭いた。
「言っておくがな。俺はアルコールが入っていないと発作を起こすんだ。
 だから、文句は一切聞かない。解ったか!?」
「解りました、バディ中佐」
健が答えた。
「宜しい。ヒック!」
「何だか変なのが来ちゃったな…」
甚平がジュンに囁いて、窘められていた。
「とにかく、この基地の設備たるや莫大な費用を掛けて作られている。
 メインコンピューターなど、見た事もない物だった。ヒック!」
スクリーンに写真が映し出された。
健達は南部博士を見た。
「私もこんなに設備の整ったコンピューターには未だお目に掛かった事がない」
南部博士はそう言った。
「確かに臭いですね……」
ジョーが顎に手を当てた。
「ああ、少々酒臭いのは気にするな。その内慣れる。ヒック!」
「そんな事を言ってるんじゃねぇ!」
ジョーはつい、声を荒げてしまった。
「失礼、バディ中佐」
ジョーは皮肉っぽくそう呼んだ。
健が良く抑えた、とばかりにジョーを見た。
誰だって、こんな酔っ払いを相手にすれば、イライラもする。
健でさえ、実はそうだった。
酒臭いのも敵わなかったが、しゃっくりが一々癇に触った。
軍人たるもの、任務の時は酒を絶つのが普通ではないのか、と健は思っていた。
あの、ISOの情報部員の『エース』は、普段は知らないが、任務中、酒も煙草もやらなかった。
それが普通だと思っていた。
健はジョーが声を荒げた事ぐらい、いい薬になったのではないかと思ったが、アレックスには全然効いていなかった。
アレックスのアル中の原因を知ったら、科学忍者隊の気持ちも変わるかもしれない。
アレックスに対して割と寛容な南部博士は、その理由もレニックから聞かされているのかもしれない。
「どちらにせよ、まずはその基地に案内して貰おうか?」
健が言った。
「勿論だ」
「それよりあんた、普通諜報部員は2人で行動する物じゃねぇのか?
 相方はどうした?」
「死んだ……」
「まさか侵入がばれてか?」
ジョーが眉を顰めた。
「いや、違う。侵入前に『これは軍の仕事じゃない』とほざきやがったから、俺が銃で殺した」
この言葉には全員に衝撃が走った。
(そこまでして突き止めたギャラクターの基地が、本部じゃなかったらどうするつもりだ?)
ジョーはさすがに動揺した。
「構うものか。俺は臆病者を嫌うんでね。ヒック!
 あんた達でもそうだ。
 臆病風を吹かすような奴がいれば、俺の銃が火を吹く」
「そんな事は有り得る訳もねぇが、あんたが引き金を引く前に俺が撃ってる。覚えとけ!」
ジョーが冷たく言い放った。




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