『ギャラクター本部発見す(8)』

「思った通りだ。カニ型ブルドーザーの倉庫だったな」
ジョーが呟いた。
「こいつは大して強くはねぇ」
そう言って、アレックスに1台に乗り込むように言った。
ジョーはそれからペンシル型爆弾を取り出して、カカっと突き立てるように投げつけて行った。
カニ型ブルドーザーは10機あった。
8機を爆破しておいて、残り2台をジャックすると言う作戦だ。
ジョーはペンシル型爆弾を全てのブルドーザーに突き立てると、自分も残りの1台に乗り込んだ。
アレックスが先に倉庫を出た。
ジョーも続いた。
背後から激しい爆発音が響き渡った。
「バディ中佐との通信方法がねぇな…」
ジョーはそう言いながら、スイッチをいじってみた。
するとアレックスから通信が入った。
『運転席の左下、今光っているボタンが通信装置だ』
「成る程。地図はあんたの頭の中だ。
 悔しいがあんたに誘導して貰うしかねぇな」
『解ってる。これから中枢部に向かうが、途中に大きな部屋があるな。
 これが何だか解らないのだ』
「機関室か何かじゃねぇのか?」
『機関室は此処から見ると中枢部よりも向こう側にある』
「だとすれば、中枢部を守る為に作られた部屋かもしれねぇ」
『どう言う事だ?』
「俺達を待ち受けている強敵がいる可能性が高いって事さ」
ジョーはそう言った。
チーフか、隊長か……。
その辺りが出て来ても不思議ではない。
闘い慣れているジョーには、そう言った勘が働く。
「バズーカ砲を持つチーフがいるかもしれねぇ。
 もしいたら、そのカニ型ブルドーザーを捨てて、逃げろ。
 このブルドーザーでは、とてもその威力には敵わねぇ」
『そうなのか?』
「ああ。俺はバズーカ砲と何度も対峙している。
 その俺が言うんだ。間違いねぇ」
『解った。言われた通りにしよう』
「とにかくその部屋に進んでくれ」
『後2〜3分で着くだろう』
ジョーはその間に健に通信をした。
「俺達がいる側の反対側に機関室があるそうだ。
 地図はバディ中佐の頭の中なんでな。
 今はそれしか言えねぇ」
『解った。こっちも戦闘中だが、機関室は発見次第爆破する』
「頼んだぜ。こっちは恐らくこれからチーフか隊長が飛び出して来そうだ」
『気をつけろよ』
「ああ、そっちもな」
通信を切ると、丁度アレックスが言った部屋に到着したのか、アレックスはカニ型ブルドーザーを止めた。
『この部屋だ。そのまま扉をぶち破るか?』
「そうしよう。だが、その役目は俺がやる。
 さっきも言ったが、バズーカ砲を担いだ奴がいたら、逃げろよ」
『解った』
ジョーはこんな場所でアレックスを失いたくはなかった。
彼の復讐心を満たしてもやりたかったし、何よりその切れ者の頭脳が惜しい。
仲間を平気で殺すなど、少し精神に異常を来たしている部分もありそうだが、それはアルコール中毒のせいに違いない、と思った。
エンジンを全開にして、カニ型ブルドーザーでその部屋の扉に体当たりする。
見事にブルドーザーの形に穴が空いた。
しかし、いきなりバズーカ砲の洗礼を受けた。
「案の定だ!逃げろっ!」
ジョーのブルドーザーは直撃を喰らったが、直前に脱出して、彼自身は無事だった。
アレックスはジョーに言われて、すぐにハッチから飛び出していた。
ギャラクターの隊員に取り囲まれたようだが、マシンガンで抵抗している。
ジョーは羽根手裏剣でアレックスの援護をしながら、自分はバズーカ砲を持ったチーフと対峙した。
ジョーが乗っていたカニ型ブルドーザーは、見事に爆ぜていた。
「さすがに対戦車砲を使っているだけの事はある。
 カニ型ブルドーザーなど1発でおしめぇだ」
ニヤリと笑った。
「良く此処までやって来たものだ。
 だが、此処から先に通す訳には行かない」
チーフは2人いた。
2人がそれぞれバズーカ砲を担いでいるのかと思ったら、対戦車砲の大きな物を2人で取り扱っていた。
「それで撃たれた日には一溜りもねぇな……」
さすがのジョーもそれを見て呟いた。
アレックスの援護をしている場合ではない。
彼の事が気になったが、アレックスも軍人だ。
自分で乗り切るに違いない。
ジョーは自分の闘いに集中する事にした。
「バディ中佐。済まねぇが援護は出来ねぇ。
 何とか乗り切ってくれ」
「俺に構うな!」
マシンガンの咆哮する音と共にアレックスの声がした。
ジョーは対戦車砲への対抗策を考えていた。
ペンシル型爆弾はまだ残っている。
これを砲門に放り込むしかないか、と考えた。
チーフ2人は爆発に巻き込む事が出来るだろう。
自分自身の身を守る事が出来ればいい。
それで何とかなるだろう。
駄目なら……、死を覚悟せねばなるまい。
だが、こんな処で無駄死にをして、戦線を離脱するのはごめんだ。
ジョーはちょっかいを出して来るギャラクターの平隊員達と闘いながらも、狙いを定めていた。
残るペンシル型爆弾は3本あった。
それを全部叩き込もう。
羽根手裏剣を放つ要領で、ジョーは右手を動かした。
敵兵と闘いながらも正確に砲門に繰り込む事が出来た。
「伏せろ!」
ジョーは走ってアレックスの処へ行き、マントで守った。
激しい爆発が起き、部屋毎消え去るような恐ろしい爆音が響いた。
対戦車砲は、その50畳程もある広い部屋を一瞬にして破壊してしまう能力を持っていた。
ジョーのペンシル型爆弾により、自爆したのだ。
「おいおい、ウィスキーが……」
「何だってんだ?」
「……溢(こぼ)れた」
ジョーは眼が点になった。
ちょっと溢れたぐらいが何だ。
今、自分が死に掛けたのが解っていないのか?
「あんた、死ぬ処だったんだぜ。この爆風でな。
 それよりも酒かい?」
ジョーは呆れて見せた。
「そうさ」
アレックスはまた蓋を開けて、ウィスキーをラッパ飲みした。
「今度はしっかり蓋を閉めたから大丈夫だ」
ジョーは両掌を上に向け、肩を竦めた。
何とも緊張感のない事だ。
「チーフは対戦車砲と運命を共にしたが、次は恐らく隊長が出て来るぜ。
 とんでもなく恐ろしい奴がな。
 本部を守っているような奴なら、相当な遣い手に違いねぇや」
『ジョー、聴こえるか?今、ジュンと甚平が機関室を爆破したぞ』
「そうか!」
それを聴いていたアレックスが言った。
「それと別に自家発電装置が3箇所にある。
 それを破壊しない内は、この基地の機能は停止しない。
 機関室が爆破されたのと同時に自家発電が作動している筈だ」
「バディ中佐が言った事は聴こえたか?」
『ああ、しっかり聴こえている。
 こっちには対戦車砲が出たぞ』
「こっちもだ!守りが硬いぜ」
どうやら健達も同じような攻撃に遭っているらしい。
「こっちは歩く地図がいるからいいが、そっちは気をつけろよ」
『心配するな。その代わりに4人が集結している』
「そうか!解った。何かあったら連絡をくれ。
 バディ中佐に訊いてみたい事があったらな」
『ああ、そうしよう』
通信が切れた。
「そう言う事だ。先に進むぜ。
 もう酒はいい加減にしておけ。
 無くなってしまうぞ」
「ああ、そうだな……」
アレックスは瓶の中身を見ている。
3分の1ぐらいになっていた。
「酒が切れると頭が働かなくなるんだろ?
 ベルク・カッツェに逢うまでもう控えとけ。
 本当に復讐したいんだったらな」
ジョーは瓶を取り上げようかと思ったが、自分で持ち歩くのには邪魔なので諦めた。




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