『ギャラクター本部発見す(14)/終章』

「待て、健。まだ隊長が生きている」
ジョーは突然思い出したかのように言った。
「あいつは羽を重油で濡らされただけだ。
 何をするか解らねぇぞ。
 俺がこの部屋に残る」
「ジョー、大丈夫か?」
「今日、何回その台詞を聴いたか解らねぇ程だぜ」
ジョーはそう言って背中を向けた。
「急ごう」
健は地下への階段を走り始めた。
ジョーは『X』の間に戻ると気配を消した。
この広い暗闇の中、まだどこかに潜んでいる筈だ。
視神経と聴覚に神経を集中した。
カタリ…、と音がした。
ジョーが入って来た事に気づき、逃げ出そうと動いたものか。
ジョーは暗闇に眼が慣れて来たので、この100畳もある広い部屋を探し始めた。
いるとしたら、部屋の隅か、ミサイルの陰だ。
ミサイルの方へと歩き出す。
またカタリと音がした。
「隊長さんよ。そこに隠れているのは解っている。
 もうカッツェはとっくに逃げ出したぜ。
 その重油たっぷりの羽を燃やされたくなかったら、金塊の在り処を吐きな」
ジョーはその時、ハッキリと隊長の姿を目視した。
「このガンで撃てば、すぐにあんたは燃えかすになるぜ」
隊長は恐怖の表情で、じりじりと下がった。
脚が震えている。
もう闘う気力は失せているようだ。
あの鱗粉が使えなければ、大した技はないのかもしれない。
だが、ジョーは油断なく近づいた。
「どうなんだ?」
「き…金塊はもう本部に持ち出されている」
「そうかい?じゃあ、その本部とやらを教えて貰おうか……」
「やめてくれ。それだけは言ったら殺される」
「俺は殺さねぇぜ。
 殺したい程恨んでいるのはカッツェだけさ」
「駄目だ。カッツェ様に殺される!」
「何を言っているんだ?
 カッツェはもう逃げ出したんだぜ」
「あ…う…う…」
蝶の姿をした隊長が妙な唸り声を上げたかと思うと、彼の頭に電極が埋まっている事が解った。
この地対空ミサイルの近くで爆発されては堪らない。
ジョーはこの隊長の首をエアガンの三日月型キットで抑え込むようにして、出来るだけ遠くへと突き飛ばした。
案の定、爆発は起きた。
「カッツェの野郎。部下の生命を何とも思ってねぇ」
ジョーはブレスレットで健を呼んだ。
「もう探しても無駄だぜ。本当の本部に運ばれているそうだ」
『本部の場所は聞き出せたのか?』
「その前にカッツェが殺しやがった。
 遠隔操作でな……」
ジョーは溜息を吐いた。
「ミサイルの傍で奴を爆発させるつもりだったんだ。
 俺達に被害が出るようにな。
 俺はもう爆発物を持っていねぇ。
 誰か来てくれ」
『ああ、全員で戻る』
「解った」
巨大なミサイルは暗闇の中でも黒光りして、不気味な存在だった。
「此処が本部じゃなかったのは、心から悔しいが、せめてこいつだけは破壊してやらねぇとな……。
 バディ中佐も辛かろう」
ジョーはアレックスの落胆した後ろ姿を思い出した。
きっとゴッドフェニックスに戻る頃には元の彼に戻っている事だろう。
「ジョー、待たせたな」
健達はすぐに戻って来た。
3人が踵から時限爆弾を取り出した。
「ジュン、効果的な場所に頼む」
「任せておいて」
ジュンが6つの時限爆弾を取り付けた。
「5分後に爆発するわ」
「よし、全員脱出だ!」
「ラジャー」
ジョーは若干ふらつきを覚えたが、足が縺れるような不覚は演じなかった。
しっかりと足を踏み入れ、健に遅れる事なく、走って行く。
基地の外に出る頃には爆発が起こり始めていた。
アレックスが井戸に残した縄梯子を登って行く。
ゴッドフェニックスの外で、竜の手当を終えたアレックスが心配そうに待っていた。
「無事に全員帰って来たな」
アレックスは嬉しそうだった。
「ああ、帰って来たぜ」
「お前、すぐに此処に座れ。
 手当のし直しをする」
ジョーは大人しく従った。
そして、手当を受けている間に、隊長を締め上げたが、本当の本部の場所を聞き出す事は出来なかった事を告げた。
「まあ、いい。また調べ出すだけだ」
アレックスは吹っ切ったらしい。
「早く、ちゃんと手術して貰えよ。2人共」
アレックスはそう言うと踵を返した。
「どこへ行くんです?ゴッドフェニックスで送りますよ」
健が言った。
「軍がそこまで迎えに来ている」
アレックスはそこでウィスキーの蓋を開け、一気に喉に流し込んだ。
「なかなか遣り甲斐のある仕事だったぜ。ヒック」
「また、しゃっくりが出やがったな」
ジョーが笑った。
酒臭さには何時の間にか慣れてしまって、アレックスといる事が不快ではなくなっていた。
それに随分と活躍してくれたものだ。
「バディ中佐。ありがとうよ」
ジョーが握手を求めた。
「カッツェに復讐を果たすまで握手はしないんじゃなかったのか?」
そう言いながらも、アレックスも手を差し出して来た。
「じゃあ、もう行くぜ」
ふらりともせず、アルコール中毒とは見えない足取りで戻って行くアレックスを、科学忍者隊は見送った。

それから1ヶ月程したある日、ジョーは傷も癒えて、サーキットに来ていた。
「そろそろ来る頃だと思ったぜ…」
後ろ姿のまま、後方に現われた男に言った。
「アルバート・レニック中佐」
「こそばゆいからその呼び方はやめろ」
レニックはまた缶コーヒーを投げて寄越した。
「バディ中佐からいろいろ聴いて来たか」
「ああ、面白い冒険譚だった。
 アレックスが出来る男だって言うのは良く解ったろ?」
「あそこまでとは思わなかった」
ジョーは振り返って、缶コーヒーを少し上げた。
ご馳走様、の意味だ。
そして蓋を開けて爽快に飲んだ。
「やっぱり『スナック・ジュン』のコーヒーの方がうめぇな」
「ふふ、缶コーヒーにそこまで求めるのは無理がある」
レニックが言った。
「バディ中佐はあれからどうしている?」
「アレックスは相変わらず1人でギャラクターの本部探しに勤しんでいるさ」
「本物だったな。あの復讐心」
「君には解るだろうと思ったよ」
「軍隊式の止血術、見事だった。
 小型ミサイルでの傷がこんなに早く回復するとはな。
 礼を言っておいてくれ」
「また逢う事もあるだろう。自分で言うがいいさ」
レニックはそう言って、背中を向けた。




inserted by FC2 system