『亀型メカ鉄獣の再来(3)』

「兄貴ぃ。どうするの〜?」
全員が意識を取り戻し、甚平が困惑したように言った。
「竜巻ファイターしかないだろう」
健が答えた。
「でも、この檻では高さが足りないわ」
ジュンが天井を見上げた。
「2本立てにするしかあるめぇよ」
ジョーがそこで言い出した。
「2本立て?」
健以外の3人が声を上げた。
「ジョーの言う通りだ。俺とジョーと甚平。そして、竜とジュン。
 この組み合わせで竜巻ファイターをする」
「でも、そんなのやった事がないわ」
ジュンの不安も解る。
「不可能を可能にするのが俺達科学忍者隊さ。そうだろ?健」
「そうだ。必ず成功させるんだ。
 威力が落ちても2本立てならこの檻も破れるだろう」
「成る程。さすがあったまいい〜っ」
甚平が健とジョーを見上げた。
5人は二手に別れて、早速フォーメーションを組んだ。
「やってみよう。科学忍法ダブル竜巻ファイター!」
健が叫んだ。
それを合図に2つの竜巻がゴウっと音を立てて、舞い上がった。
凄まじい竜巻が2本立った。
なかなか手強い檻だった。
だが、2本の竜巻ファイターはその破竹の勢いで檻を歪ませ始め、やがて弾け飛ぶように粉々に粉砕した。
全員が綺麗に着地する。
「何と!素手でこの厳重な檻から脱出しおったか!」
遠巻きにしていたギャラクターの警護隊員が驚いて声を上げ、警報装置のボタンを押した。
ギャラクターの隊員達が大挙して押し寄せる。
5人はパッと散った。
「こんな檻に俺達を閉じ込めて、科学忍者隊を捕らえたと思っていたのか?」
健が見栄を切っている。
ジョーはやってるな、とニヤリと笑って、敵兵に重いキックを浴びせた。
問題は此処を出てからどうするかだ。
4本の足はもう使えない筈だ。
全員で司令室を目指すか?
このメカを空中に飛ばせなければならない。
空に逃げ出さなければならない状況を作るのだ。
だが、どうやって!?
それならメカをジャックして、自分達で操縦した方が良いのではないか、とジョーは闘いながら先の展開を考えていた。
そうして、どこか人家のない山間に運んで行き、そこで爆破する。
それが一番の手だろう。
どんな方法を採るにせよ、今はとにかく司令室を目指す事だ。
それには眼の前の敵を倒す。
ジョーは気合を込めて、敵兵を長い脚で薙ぎ払った。
そこへ先程、ジョー達を罠に嵌めたチーフ達がやって来た。
4人いる。
それぞれを倒さなければならない。
バズーカ砲は持っていない。
他の一般隊員と同様にマシンガンを抱えていた。
チーフは自分が担当した相手の処へとやって来た。
最後まで『担当制』で行こうと相談し合ったのだろう。
ジョーの処には、先程の水色の隊服のチーフが近づいて来た。
「バズーカを持って来ても良かったんだが、それだと卑怯だからな。
 マシンガンで勝負してやる事にしたのさ」
「どうやら、この4人はチーフの中でも屈強揃いらしいな」
ジョーが言った。
「その通りだ。科学忍者隊を陥れる為に作られた罠は、電気ショックだけではない。
 我々自身もそうなのだ!」
「成る程、自信がありそうだな」
いきなり、チーフはマシンガン攻撃を仕掛けて来た。
ジョーはそれを軽々とジャンプして避け、チーフの喉元にエアガンを突きつけた。
「そんなに簡単に行くと思ったか?」
しかし、チーフは不気味にニヤリと笑っただけだった。
マシンガンを捨て、ジョーの身体に抱きつくようにして背中に手を回した。
両掌に電極が仕込んであり、電気ショックが流れる仕組みになっていたらしく、またジョーの身体に衝撃が走った。
しかし、マントがあるので、辛うじて意識を保っていられた。
身体が動かない。
エアガンは抱きつかれた瞬間に取り落としてしまった。
身体がビリビリと痺れる。
チーフ自身が罠とは、こう言う事だったのだ。
先程1度電気ショックを浴びているせいもあってか、身体が麻痺して行く感覚があった。
だが、此処でやられる訳には行かなかった。
チーフも電気ショックに巻き込んでやろうと思って身体を捻ったが、どうやら防護服を着ているらしい。
それならば……。
ジョーはそろりと右手を動かした。
なかなか思い通りには動かない。
ビリビリと痺れた身体は、ひきつけを起こしたかのように、ピクピクと動いている。
それでも、歯を喰い縛ってそうした。
まずは苦労してチーフの身体から右腕を抜いた。
そして、漸く背中に手を回し、チーフの左手の甲に羽根手裏剣を突き刺した。
「うおっ!」
と言う声がした。
チーフの身体がよろりとジョーから離れた。
その隙にジョーは床に転がってエアガンを拾い、体勢を立て直した。
床に片膝を着いたままで、エアガンをチーフの心臓目掛けて発射する。
チーフは悶絶して、倒れた。
仲間達を見る。
健もほぼ同時にチーフを倒したらしい。
ジュンと甚平、竜はまだ電気ショックから逃れられていなかった。
ジョーは健と頷きを交わし、竜の手助けに入った。
羽根手裏剣を2本飛ばし、敵の2本の手の甲を射抜いておき、竜から身体を離した処で同じくエアガンで倒した。
健の方はブーメランを敵の後頭部に反転させ、首を打って倒した。
「ふう。助かった〜」
竜がジョーを見てホッとする。
「さて、これからだ」
健は言った。
「このメカ鉄獣を浮上させなければならない」
「俺達で乗っ取るしかねぇんじゃねぇのか?」
「ああ、俺もそれを考えている。竜に活躍して貰わなければならないが、大丈夫か?」
「身体は痺れとるが、こんなもん大丈夫じゃわい」
「よし、じゃあ司令室を探そう。操縦席もそこにあるに違いない」
「ラジャー」
5人は司令室を目指す為に動き始めた。
チーフを倒したとは言え、まだ隊員達は残っている。
だが、科学忍者隊にとっては雑魚だ。
5人揃って、それぞれが技にキレを見せた。
すぐに雑魚兵達の山が出来た。
「チーフは倒したが、司令室には隊長がいる筈だぜ」
ジョーが言った。
「カッツェもいるかもしれない」
健が答えた。
「どうかな?こう言う籠城タイプの仕事にあいつが乗り込んで来ているとはどうしても思えねぇな」
「ジョーの言う事にも一理あるわね」
ジュンが賛同した。
「とにかく行こう。こうしている間にも下敷きになっている人々の生き残りが助からなくなる」
健の言葉に全員が表情を引き締めた。
そのまま走り始めた。




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