『爆破(中編)』

K国に旅行者としてG−2号機と共に潜入したジョーは、南部博士に聴いた金塊が盗まれたと言う王宮に、夜半潜入する事にした。
金塊は1度に全部持って行かれた訳ではなく、何度も潜入されているらしい。
警備兵が就いていたが、悉く倒されているそうだ。
それも拳銃で撃たれているのだと言う。
ギャラクターならマシンガンだろう。
大体、フランツを恐喝した辺りがギャラクターらしくない。
フランツには、ある物が送りつけられていた。
それは、誰かの『詰めた』小指だったと言う事だ。
つまりはマフィアである可能性が一段と高まった事になる。
フランツ、いや、ISOの情報部員『エース』はマフィアの尻尾を掴んでいたのだろう。
そして、管轄外の事でもあるし、他言無用だぞ、とマフィアは恐喝に及んだのだ。
お前の家は解っている。
お前自らか、家族にも危害が及ぶかもしれんぞ、と。
ジョーはそれを南部博士から聴いて、成る程、と思った。
だからフランツの車に死なない程度の爆弾が仕掛けられたのだ。
この一件から手を引け、と言う事なのだろう。
そして、手を引かねば次は容赦なく殺す、と言う最大級の恐喝だ。
これでもマフィアにしては甘い方だろう、とジョーは思った。
フランツをひと思いに殺さなかったからだ。
しかし、マフィアの情報網も大したものだと思う。
情報部員としてはベテランで、コードネームも与えられ、普段は顔を変えて諜報活動をしているフランツの正体を簡単に見破ってしまったのだから。
ジョーはその事に戦慄した。
ギャラクターよりも、優れているかもしれねぇな、と思った。
だが恐れる事はない。
金塊を取りにやって来たら、その現場を抑えて警護兵を救い、マフィアを国際警察に突き出せば良い事だ。
ジョーにとっては朝飯前の出来事だろう。
バードスタイルになっても構わない、と南部博士には言われている。
潜入する時はそうするつもりだ。
少なくとも銃弾はマントで防げる。
生身でもやられたりはしない、と言う自負があったが、「深追いをして傷を受けるような事は許さん」とも言われている。
此処は手堅くやろう、と思っていた。
フランツはジョーが動いたと知ったら、どう思うだろうか?
科学忍者隊のG−2号が事件を解決したとなったら、ジョーの正体を知ってしまうに違いない。
いや、彼は既にジョーの正体に気付いている。
確信が持てた訳ではないが、ジョーはそう思っていた。
お互いに相手の正体に気づきつつ、サーキットや任務で逢えば知らぬ顔を通した。
それが大人の対応と言うものだった。
ジョーはそれで良いと思ったし、このまま最後までそう言った関係を築いて行くつもりだ。
いつか、お互いに歳を取って−フランツはジョーの倍の年齢だったが−互いの事を笑って話せる時が来るかもしれない。
それまでは知らぬ振りを続けようと思うし、フランツも続けてくれる事だろう。
しかし、マフィアの恐喝方法とは相変わらず嫌なものだ。
切断した人の小指を送って来るなど、何とも人間のする事とは思えない。
その点はギャラクターと何ら変わらない、とジョーは思った。
そして、これは上手くやらないと、追々フランツに累が及ぶ事になるかもしれない。
ジョーはいろいろと考えたが、考えてもマフィアに出逢ってみなければ、どう処理したら良いものか解らない。
マフィアを根こそぎ国際警察に逮捕して貰うしかあるまい。
こんな処に侵入して来るのは、恐らくは下っ端だ。
下っ端が勝手にした事、などと惚(とぼ)ける事などは出来ないと思われるが、注意して掛からなければならない。
ジョーはギャラクターの扱いには慣れていたが、マフィアの扱いに慣れている筈もなかった。
そう言ったちょっとした配慮はフランツの方が上手いだろう。
だが、彼は当分は動けまい。
ジョーがやるより他なかった。
フランツの家族に被害が及ばないように、一網打尽にするしか手はないのだ。
マフィアに住処を知られたフランツは、その間に引越しをする必要があるだろうが……。
ジョーはマフィアが王宮に潜入するのなら夜だろう、と思った。
まずは下見をする。
王宮の門は当然だが、固く閉ざされていた。
門番が左右に2人、交代で就いている。
それだけではない。
事件を受けて、国際警察も外を張り込んでいた。
これを躱してジョーは潜入しなければならない。
科学忍者隊が単身事件を探りに来たなどと言い訳も出来まい。
南部博士からそこまでの話を付けた訳ではなかった。
ジョーは志願してこうしてやって来たのだ。
科学忍者隊の任務ではない。
潜入するには地下からが良いかと思われた。
王宮にもマンホールぐらいはあるだろう。
彼は今の内に地下を探っておこうと考えた。

G−2号機を駐車場に停め、ジョーは人目を避けて手頃なマンホールから地下へと潜った。
バードスタイルに変身し、暗がりに眼が慣れるのを待つ。
大体の上の道の流れは把握して来た。
王宮の方向がどちらか、と言う事を見失わなければ、辿り着ける筈だ。
ジョーは自分が入って来たマンホールの内側に、光る印を付けた。
さすがに国際警察もマンホールの中までは張り込みをしていないようだった。
しかし、マフィアが入り込むとしたら、マンホールが一番可能性が高いように思える。
少なくとも、王宮の出入り口は封鎖されており、そこの兵隊は殺されていないのだ。
王宮内を守っている兵隊が、悉く殺されている、と言う話だった。
これまで2回襲われている。
この頃では、王宮警備に就きたくないと言う情けない兵士も多いらしい。
ジョーは自分が思った距離を歩いてみた。
徒歩で何歩掛かったかによって、距離を計る事が出来るのだ。
自分の歩幅は当然知っていた。
問題は方向だった。
方向さえ誤らなければ、王宮の地下には潜り込める。
実際にマフィアが潜り込んでいるのだから、王宮の中にマンホールはあるとジョーは踏んでいる。
ジョーは此処だと見当を付けた処のマンホールの蓋を薄く開けてみた。
間違いなく、王宮の中だ。
マフィアの犯行現場を抑えなくてはならない。
ジョーは空腹を覚えたが、このままマンホールの中に待機する事にした。
夜の闇が迫ったら、密かに此処から飛び出して、王宮の屋上に跳躍するつもりだった。
そうしていれば、マンホールを監視する事も出来る。
屋上にも兵隊がいるかもしれない。
兵隊がいない場所を見つけて、屋上の外側の壁面にぶら下がるしかないと考えていた。
それは彼にとっては簡単な事だ。
エアガンの吸盤を伸ばしてワイヤーでぶら下がればいい。
屋上の周りはぐるりと装飾されたコンクリートの壁で塞がれていたのだ。
外からは屋上で高貴な方が何をしていても、解らないようになっている。
王宮の外枠も、高い塀で囲ってあったが、高層ビルが建ち始め、外から見られる危険性もあった。
そう言った事に配慮したその設計が、ジョーの隠れ場所を作ってくれる事にもなったのである。
ジョーはマンホールを軽く持ち上げたその一瞬にそれらの事を見抜いていた。
屋上がある事は、観光案内を見て知っていた。
王宮の施設を掲載した物があったのだ。
王宮は国王の誕生日などに、庭を公開して、お祝いに駆け付ける国民との対話の場所としていた。
だから、そう言ったガイドブックが存在していたのである。
ジョーは準備万端、とばかりに地下水路の壁に寄り掛かった。
湿気が嫌だったが、仕方がない。
後は夜が来るのを待つばかりとなった。
マフィアの連中が来る前に、先に自分が潜入していれば良いのだ。
国際警察はマフィアが出てから、外で包囲網を固めるだけだ。
王宮内に入る事は許されない。
万事軍隊が警護する事になっていた。
金塊は恐らく王宮内の地下に眠っている事だろう。
だが、さすがに地下水路から直接行ける筈もない。
マフィアは潜入したら、マンホールから地上に出て来る筈だ。
そこを狙おう。
ジョーの計算はそう成り立っていた。




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