『狙われた高速道路(1)』

ジョーはサーキットの帰りに、とある都市の高速道路を走っていた。
渋滞が起こり始めたので、どうしたのかと見ていると、彼の周囲の車も含めて、タイヤがパンクし始めていた。
ジョーのG−2号機は特殊タイヤを履いているので、パンクは免れたようだ。
取り敢えず、下の幹線道路の様子を見て、高速道路から飛び降りた。
無事に着地すると、後方から走って来た車が驚いてクラクションを鳴らしたが、ジョーは左の窓を開いて手を振って「済まないな」と身振りで伝えた。
誰かがガラスでも撒いたのか。
それにしては大規模な範囲でパンクは起きていた。
今夜のニュースに出るだろう。
テレビ局らしいヘリコプターが集まり始めている。
その時だった。
高速道路の後ろの方で異音がしたのが遠くから聴こえ、ジョーはG−2号機を停めて高速道路を振り返った。
すると巨大な電車のような連結した物が、高速道路に停まって動けなくなっている車を跳ねるようにして一掃している処だった。
これはメカ鉄獣に間違いない。
ジョーは南部博士に自分が今、見た状況を説明した。
『うむ。今、ニュースで生中継されているのを私も観た。
 科学忍者隊を招集するから、君はそこで待っていたまえ』
「ラジャー」
南部博士はアンダーソン長官から言われて、テレビを点けていたのだ。
そこでたまたまメカ鉄獣の登場を目撃したと言う訳だ。
テレビ中継のヘリもミサイルのような物で爆破された。
良く見ると電車のようだが、蛇のようでもある。
頭の部分はくねくねと動き、そこからヘリを攻撃したのだ。
メカを連結させて蛇のように動かしているのか?
おかしなメカだ。
ジョーが観察していると、メカ鉄獣は車達を跳ね飛ばしながら、トンネルへと入り、そこで姿を消した。
ジョーは反対側から出て来る物と思い、急いで並行して走っている幹線道路を飛ばした。
しかし、長いトンネルの先からは一向に出て来る気配がない。
トンネルの中で潜んでいるのだろう。
健達が来たので合体し、その事を話す。
「トンネルの中に潜んで一体どうしようと言うのだ?」
健が言った。
「トンネルの地下に何かあるのかもしれねぇな」
ジョーは自分の勘を告げた。
「地下に?!」
健はジョーの考えに驚いたようだが、同時に納得もした。
「甚平。G−4号機を分離して、トンネルの中にまだメカ鉄獣がいるかどうか、確認して来てくれ」
「ラジャー」
甚平はコックピットを飛び出して行った。
こう言う時、一番身軽なのが彼のメカである。
甚平は程なくして、通信をして来た。
『メカ鉄獣はいないよ。トンネルの中を進んでみるよ』
「解った!気をつけるんだぞ、甚平」
『大丈夫さ』
強気の言葉が返って来た。
『道路に大きな穴が空いているよ。メカ鉄獣はそこから地下に入ったんじゃないかなぁ?
 おいら出来るだけ追跡してみるよ』
「危険な時はバードスクランブルを発信しろよ」
『ラジャー!』
甚平は元気良く答え、穴の中へと潜入したようだった。
『いたいた!凄く深くまで掘り進んでいるよ』
「一体何をする気だ?健、南部博士に調べて貰おうぜ」
「ああ」
健が博士に連絡をして、このトンネルの地下に何があるのかを調べて貰う事にした。
「何かの資源が眠っているのだろうか?」
ジョーは腕を組んで言った。
「そんな物があったら、此処にトンネルは造らないと思うのだが……」
と健。
「だが、その時点で発見されていなかったとしたらどうだ?」
ジョーは眼をぎらつかせた。
「その可能性はあるわね」
ジュンが言った。
「なあ、おら達、上空でのんびりしていていいのかのう?
 甚平が心配なんじゃが……」
竜が不安げにそう言った。
その気持ちは誰もが同じだった。
『ああ〜っ!何か変なガスが出て来たよ!』
「甚平!早く地上に出るんだ!」
『ラジャー!』
甚平は必死にG−4号機を操縦して、トンネルから出て来た。
その直後に、トンネルからも怪しいガスが噴出した。
「甚平!ガスを採取出来るか?」
健の話し掛けに応答がない。
「こりゃあ、行かん!」
竜がゴッドフェニックスを操縦して、G−4号機の回収に掛かった。
「ガスの採取は俺がする」
ジョーがそう言って、ノーズコーンのG−2号機まで降りて行った。
ジョーはガスマスクを着けて、竜に通信をする。
「ノーズコーンを開けてくれ」
G−2号機は勢い良く出る。
ジョーはコックピットを開けて、透明なフラスコにガスを採取し、蓋をした。
ガスマスクを着けていても、頭がクラクラとした。
「竜、回収してくれ」
『ほいよ』
G−2号機は再びゴッドフェニックスと合体した。
コックピットに戻ると、健が甚平を連れて戻って来た処だった。
「甚平はどうだ?」
「ガスにやられて意識を失っているが、生命には別状なさそうだ」
健が答える。
「そいつは良かった…。このガスは皮膚からも吸収されるようだ。
 俺も少しばかり気分が悪くなった」
「大丈夫か?」
「ああ、ガスマスクで殆どが覆われていたからな」
「一旦基地へ帰還する。このガスも分析して貰わなければならない」
健が帰還命令を出した。
全員が納得していた。
「周辺の住民には避難命令を出して貰った方がいいと思います」
スクリーンに現われた南部博士にジョーがその事を告げた。
『解った。早速手配をしよう。甚平が心配だ。早く帰還してくれたまえ』
「ラジャー」
竜は言われなくても解っとるわい、とばかりに飛ばしていた。
基地に戻ると、甚平はストレッチャーで運ばれた。
「点滴で良くなるに違いない。諸君、安心したまえ」
南部博士もホッとしたような表情になり、全員に安心感を与えた。
「良かったわ〜」
ジュンが涙を拭った。
ジョーはそのジュンの肩を軽く叩いた。
全員がホッとしていた。
最年少の仲間だ。
健は危険な事をさせたと後悔していた。
「健。あの時はG−4号機が一番の適役だった。おめぇでなくてもそう判断したさ」
ジョーは言った。
「解ってはいるんだが、もっと早くに退却させるべきだった」
「それを言っても始まらねぇだろ?それよりも俺達はその穴をもう1度調査しなければならねぇぜ」
「ああ。どうやって調査するかだ……」
「メカを使わずに歩いて行くしかねぇか。ゴッドフェニックスじゃあ、どうしようもねぇ。
 そうか!あのメカ鉄獣の大きさなら、俺のG−2号機でも入れるな」
「だが、殆ど真下に向かっているぞ」
「そいつは大丈夫だ。G−2号機の性能なら充分に行ける」
「G−3号機でも何とか行けると思うわ」
「それなら、俺はジュンの後ろに乗せて貰おう」
健が言った。
「おらは?またG−5号機で待機かえ?」
「そうだ。メカ鉄獣が地上に現われたらどうする?」
「解ったわい……」
竜は不満そうだったが、そう答えた。




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