『狙われた高速道路(3)』

ジョーはメカ鉄獣が掘って行った穴を走り続けた。
穴は右往左往しながらも、ある地点に向かっていた。
それは健達が待ち受けている山脈のどこかに繋がっているようだった。
途中でVXガスの液体が途絶えた。
「そろそろだな……」
ジョーは呟くと、スピードを緩めた。
此処からは慎重に行かねばなるまい。
彼が近づいている事に気づかれるのをなるべく遅らせたい。
「VXガスが途絶えた。もう基地は近いぜ」
『解った!充分に気を付けてくれ。俺達も場所が解り次第、すぐに突っ込む』
「ああ、待ってるぜ」
ジョーは通信を切って、運転に集中した。
ガスマスクを着けているので、視界が遮られるのだ。
そんな中で良く、垂直に近い道を走り降りて行ったものだと自分でも思う。
任務に燃えていたからか。
G−2号機との一体感が彼にそれを成し遂げさせたのだ。
「俺の良き相棒。一緒に基地に突っ込むぜ」
ジョーは愛機に声を掛けた。
G−2号機は無言だが、それに応じたように思う。
地下は暑い。
G−2号機はそれでも、ジョーを少しでも暑く感じさせないように守ってくれていた。
それをジョーはひしひしと感じ取った。
(有難うよ……)
ガタガタとしていた道が突如鉄で囲まれたきっちりとした通路に入った。
「健、ついに基地に到着だ。まだメカ鉄獣は発見出来ていねぇが……」
『G−2号機の発信地点にゴッドフェニックスの機首を突っ込ませる。
 お前はすぐに合体してくれ。メカ鉄獣の来襲に備えるんだ』
「ラジャー」
やがて、ゴウっと音がして、鉄の壁をゴッドフェニックスの機首がめり込んで来た。
ジョーはノーズコーンに格納された。
すぐにコックピットに上がって行く。
「ゴッドフェニックスはこのままにして、全員で基地に突入する」
健が言った。
いつも留守番の竜が嬉しそうに、「ラジャー」と言った。
全員がトップドームに上がった。
「行くぞ!」
「おう!」
ジョーは健の掛け声に応じて、跳躍した。
ゴッドフェニックスが突っ込んだ事で、ギャラクターの隊員達が彼らの侵入を知り、ゴッドフェニックスを囲んでいた。
それらに早速攻撃を仕掛ける。
メカ鉄獣の軌跡はずっと地下を走っていた為か、泥の跡として残っている。
電車の軌跡のようにも見える。
レールがないのに、良く走れたものだ。
仕組みが違うのだろう。
これを追い掛ければ居場所は突き止められる。
地上にいぶり出して、ゴッドフェニックスで対抗すべきだ。
この基地はそれ程深い場所には位置していなかった。
だから、ゴッドフェニックスでも突っ込んで来る事が出来たのだ。
とにかくギャラクターの隊員達を倒す事が先決だ。
5人はバラバラに散って、闘い始めた。
甚平は完全に回復しているようだったし、ジョーもVXガスの影響は受けていない。
念の為、全員がガスマスクを腰に装備していた。
ジョーはジャンプして敵兵の首に腕を掛けた。
そのまま身体を振り回して、投げ飛ばす。
膂力があるジョーだから出来る事だ。
竜とはまた違った意味で、細い身体にはパワーが眠っている。
「とうっ!」
ジョーは気合を込めて、敵兵に長い脚でキックを浴びせた。
敵がどうっと倒れ込み、仲間も巻き添えにした。
次の瞬間には彼はもう動いている。
羽根手裏剣を繰り出し、マシンガンを取り落とさせた。
また暴発音が響き渡る。
銃弾に当たり、「ぎゃあ!」と叫んで倒れて行く者が出た。
自業自得だ、といつもそう思う。
ジョーは腰からエアガンを抜き出し、狙いを定める。
彼に狙われたら最後、その餌食になる事は眼に見えている。
ギャラクターには科学忍者隊に射撃の名手がいると言う事は知れ渡っている。
それがジョーだと言う事は知らないが、エアガンを持ち出した段階で気づく。
しかし、その時にはもう遅いのだ。
三日月型キットで顎を打ち砕かれる隊員が続出した。
「そんなに綺麗に並んでいるからだよ」
ジョーは嘲った。
そのまま回転して、周りにいる隊員達に重いキックを浴びせて行く。
バレエダンサーのように、綺麗に一巡した。
彼の周りで、バタリと隊員達が倒れた。
円を描いている。
崩れ落ちた敵を乗り越えて、ジョーは進んだ。
鳩尾にパンチを繰り出すと、その拳を捻った。
効果は絶大だ。
敵は一瞬の内に気絶した。
ジョーは後ろに脚を蹴り上げた。
彼の後方から頭を殴り付けようとしていた隊員が悲鳴を上げて倒れ込んだ。
まるで背中に眼が付いているように、ジョーは気配で闘う事が出来た。
暗闇での戦闘訓練の成果はそんな処にも出ているのだった。
そこら辺にいた隊員達が一掃された。
「この泥の軌跡を辿って行こう」
健が走り始めた。
全員がそれを追い掛ける。
この基地を破壊してしまえば、メカ鉄獣は地上にいぶり出されるだろう。
まずは軌跡を追って中枢部位まで行き、そこで動力室や司令室を爆破してしまうのが、効率的だと思われた。
メカ鉄獣はすぐに発見された。
ギャラクターの下位隊員達が整備をしていた。
そこには敢えて近づかなかった。
「甚平と竜は動力室を探してくれ。俺達は司令室に行く」
健が指示を出した。
「ラジャー」
2人は走り始めた。
「司令室を探すぞ」
「此処は別れよう。俺は北の区域を探すぜ」
ジョーはそう言うと、1人離れた。
健とジュンを2人だけにしようと言う気遣いではない。
闘いの時にそんな気遣いは要らない。
ジョーはただ、自分の勘でそちら方面に司令室があると踏んだだけだ。
3人居るのなら、二手に別れた方が効率的でもある。
健は勝手に1人で動き出すジョーに、一瞬溜息を吐いたが、何も言わなかった。
彼が自分の勘で動いている事が解ったからである。
「ジュン、俺達は南区域を当たろう」
「ラジャー」
そうして、3人は別行動を取る事になった。
ジョーはずんずんと進んで行く。
途中で敵兵に出逢えば、容赦なく倒して行った。
部屋と言う部屋に銃口を尖兵に転がり込んだ。
なかなか司令室らしき部屋には辿り着かなかった。
自分の勘が外れたのか、と思ったが、とにかく探す事だ。
敵がまた現われた。
突然その数が増えた。
ジョーは司令室が近いと確信した。
「うおりゃあ〜!」
跳躍して、敵兵に鋭いキックを与えた。
そうして闘いの口火を切ったジョーは、実に生き生きと闘った。
闘いこそが自分の生きる場所、と言わんばかりの闘い振りだった。




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