『狙われた高速道路(4)』

ジョーは闘いながら、先へと進んだ。
ギャラクターの隊員が増殖して来た以上、こちらの北区域に司令室がある事には間違いない。
敵兵に肘鉄を与えておき、回転して別の隊員に膝蹴りをお見舞いした。
そのまま敵を切り拓きながら前へと進んで行く。
「健!そっちはどうだ?どうやらこっちが当たりのようだぞ」
『そうか。南区域にはそれらしき部屋はない。これからそっちに向かう』
「解った!敵が多いんだ。頼むぜ」
ジョーはそう言って通信を切り、雑魚兵と闘い続けた。
時間を短縮するには、健達を応援に呼ぶのが一番良いのだ。
彼はそう言う処に意地を張ったりはしなかった。
早く片付ける事以上に効率の良い方法はないのである。
バズーカ砲を担いだチーフが突如として現われた。
特殊バズーカ砲だ。
普通のよりも口径が大きい事に、ジョーは気づいた。
あのバズーカ砲を取り扱えるとは、相当に腕が立つ男だ。
それでなくては、担いでいる事すら苦痛になる筈…。
南部博士が開発した特殊バズーカ砲を、ギャラクターでも模倣したのか?
下手をすれば、博士の特殊バズーカ砲よりも口径が大きいかもしれない。
あれにやられては、マントで防いだとしても大怪我を負う事になる。
まともに喰らってはまずい。
ジョーの額から冷や汗が流れた。
しかし、考えようによっては、重さで動けないだろうし、ジョーに狙いを定める事は難しい筈だ。
彼は闘っている間は、一瞬たりともじっとしてはいないのだ。
下位の戦闘員と闘っている間、チーフはじっとジョーに狙いを定めていた。
部下の生命などどうでもいい。
巻き込んででも、ジョーを狙い撃つ。
その覚悟が見て取れた。
バズーカ砲は連発ではない筈だ。
まずは1発撃たせてしまえ、とジョーは思った。
自分を狙っている銃口を意識しながら、ジョーはバック転をした。
その瞬間にマントを砲弾が掠めた。
マントの一部が焼け焦げている。
ジョーは無傷だ。
しかし、相手のチーフに慌てた様子はない。
また特殊バズーカ砲を構えている。
「何っ!?」
ジョーは思わず唇からその言葉を漏らした。
特殊バズーカ砲は連発出来るように出来ているらしい。
ギャラクターの科学力はどこまで進んでいるのか?
「ジョー!」
健達が現われた。
「あのバズーカ砲に気をつけろ!連発が出来るし、口径がでかい!」
ジョーは最初に注意喚起をした。
健が息を飲むのが解った。
そして、とにかく雑魚兵達を片付け始めた。
ジョーも同じだ。
バズーカ砲を意識しながら、敵兵を倒して行く。
チーフが健に向かってバズーカ砲を発射した時、ジョーはエアガンのワイヤーを使って、チーフの頭に直撃を喰らわせた。
チーフは衝撃でよろりとした。
そのタイミングを狙って、砲弾を避けた健がブーメランを投げた。
チーフは首を打たれて、倒れ込んだ。
「このバズーカ砲は貰っておこう。後何発入っているか解らねぇが……」
ジョーは重いバズーカ砲を肩に担いだ。
「ほう。5連発だ。大したもんだな。後3発は使えるぜ」
「ジョー。司令室に急ごう」
「ああ。まだ発見は出来ていねぇんだ。だが、この近くに間違いはねぇ」
健、ジョー、ジュンの3人は、先へと進んだ。
やがて、広い通路に出た。
「健!あそこ!」
ジュンが指差した場所に、大きな扉があった。
「ドアを開けるスイッチはあるか?」
健が訊いた。
「見当たらないわね。爆破しましょう」
「このバズーカ砲でやってやるぜ」
ジョーはそう言って片膝を着き、特殊バズーカ砲を構えた。
国連軍選抜射撃部隊で使った特殊バズーカ砲よりも、やはり口径が大きく、反動が強い事が予想された。
「2人共、下がっていろ」
大きな破裂音が鼓膜に響き渡った。
ジョーの身体は数センチ後ろに下がった。
「大した武器だぜ」
扉には大きな穴が空いていた。
3人が充分に通れるだけの穴だ。
それだけ威力が強かったのだ。
ジョーはバズーカ砲を担いだままで、最後に中に入った。
「カッツェはいねぇようだな。隊長はどこだ?」
「隊長はメカ鉄獣の方にいるのかもしれないな」
部屋にいた隊員達は、雑魚ばかりだった。
「残りの2発でこの部屋を吹っ飛ばしてやる。こいつらを頼むぜ」
ジョーはそう言って、メインコンピューターを狙い撃ちした。
1発で効果があった。
残り1発を使う必要はなかった。
大きな爆発音と共に、メインコンピューターが爆ぜて、激しい爆発を起こした。
「逃げるんだ!」
健が叫んだ。
3人は先程ジョーが空けた穴から、脱出した。
「凄い威力だな…」
健が呆れたようにジョーを見た。
「ああ、俺も驚いたぜ」
「こんな恐ろしい物を開発していただなんて…」
ジュンが戦慄した。
「しかし、これを取り扱える奴はそうはいねぇ。さっきのチーフは大したもんだったぜ」
「そうか。ギャラクターの隊員の中にも、そうはいないって言う事か」
「ああ、そうだと思うぜ」
「それを取り扱えたジョーはやっぱり凄いわね」
「のんびりしている場合ではない。ゴッドフェニックスに戻るんだ。
 メカ鉄獣が出て来るぞ!」
健が言った。
確かにその通りだ。
「甚平、竜!動力室はどうした?」
『探すのに手間取ったけど、今爆破出来たよ』
「ゴッドフェニックスに戻れ。司令室を破壊したから、メカ鉄獣が出て来る筈だ」
『ラジャー』
「ジョー、そのバズーカ砲はどうする?」
「持って帰る。博士の研究材料になるかもしれねぇ」
「邪魔になったら、捨てろ。いいな?」
「解ってるぜ」
健はジョーの返事を聴いて走り始めた。
ジョーとジュンも続く。
急がなければならない。
メカ鉄獣が地上に出て、どこかに行ってしまう前に、この土地で始末を着けたい。
それは5人に共通している思いだった。
どこかの街にもう被害を与えたくなかった。
ゴッドフェニックスに5人が揃うと、健がガスマスクを装着するように指示をした。
「敵はいつVXガス攻撃をして来るか解らないぞ。
 竜、機首を基地から抜くんだ」
「解っとるわい」
竜はもう既にその操作を行なっていた。
ゴッドフェニックスが空中に浮かんだ時、山脈の一部がまるで火山の噴火のように煙を猛々と噴き始めた。
そこがめりめりと盛り上がって来て、蛇のような、電車のような訳の解らないメカ鉄獣が、ついに姿を現わした。




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