『謎の飛行物体』

「アラリア地方に謎の飛行物体が現われた。科学忍者隊、出動せよ!」
南部博士から通信があって、科学忍者隊はゴッドフェニックスに集結した。
「謎の飛行物体って、どんな物なんですか?ギャラクターですか?」
健が上のスクリーンに向かって訊いた。
『いや、全く以て詳細不明である。この写真を見たまえ』
博士の代わりに円筒形の光る物体が画面に現われた。
「竜、計器飛行に切り替えて、メインスクリーンに映し出せ」
「ラジャー」
その写真はメインスクリーンに映し出された。
「何ですか、これは?まさかUFO?」
ジョーが呟くように訊いた。
『その可能性もある。と、言うのは飛び方に特徴があるからだ。
 次の動画を見てくれたまえ』
未確認飛行物体は、転々と消えては現われる事を繰り返している。
『ギャラクターのメカ鉄獣の可能性もあるので出動して貰ったのだが、実の処、詳細は全く解らないのだ』
「解りました。詳細を調査します」
『頼んだぞ』
博士の姿がスクリーンから消えた。
「健。こいつは早く行かねぇと消えてしまうかもしれねぇぜ」
「ジョーはUFO説か?」
「ああ、俺はそう思う」
「とにかく行ってみよう。実際に見てみない事には始まらない」
「ラジャー」
全員が声を揃えて答えた。

アラリア地方に飛んでみると、おかしな物体はまだ浮遊していた。
それもかなりの高度を取って飛んでいる。
飛行機など比ではない。
「あれは何だ?」
健が思わず叫んだ。
海の中を泳ぐ水母(くらげ)のように、のらりくらりと浮遊している。
そう、飛んでいると言うよりは『浮遊している』のである。
それがフッと消えて、テレポーテーションをしたように、別の地点に現われる。
「あれがギャラクターだと言えるか?バードミサイルをぶち込んでみるか?」
「ジョー、少し様子を見よう」
「また、消えたぞいっ!」
「探せ!探すんだ」
「健、レーダーには何も映っていないわ」
ジュンが言った。
「未確認飛行物体が現われている時にも、レーダーは反応していないのよ」
「益々ギャラクターじゃなさそうじゃねぇか…」
ジョーは顎に手を当てて、呟いた。
「あ、また現われたぞいっ」
「博士。ビデオを撮ってそちらに電送します。判断は博士に委ねたいのですが……。
 我々にはUFOにしか見えません」
『解った。リアルタイムで送ってくれたまえ』
ジョーは不思議な物を見るような気分でそれを見ていた。
随分長居するUFOだ。
地球上の何かを探っているのか?
「普通は発見されるとすぐに消える事が多いのにな」
ジョーは言った。
「況してや俺達のゴッドフェニックスが近づいているのに、逃げようとはしねぇ」
「向こうはこっちに気づいていないんじゃないの?」
甚平がそう言った。
ゴッドフェニックスは一点でホバリングしていた。
動きがないので、相手が気づいていない可能性は確かにあった。
「甚平の言う通りかもしれんな」
健も同意した。
「竜、拡大写真も撮って博士に送るんだ」
「ラジャー」
スクリーンに大写しにされた未確認飛行物体は、白い円筒形の物が光っている風だった。
1機しか来襲していない。
良く見ると円筒形の先が少し尖っている。
その円筒形が急に回転し始めた。
円周方向ではなく、棒がぐるぐると回るように、回転している。
「何だ、この動きは?ギャラクターだったのか?!」
ジョーが叫んだその時、未確認飛行物体はフッと姿を消した。
「おい、消えたぜ、健……」
「ああ……。竜、念の為この辺りを周回してくれ」
「ラジャー」
探しても探しても、姿はない。
テレポーテーションしたのだろうか?
ギャラクターにはそのような技術はまだないだろう。
そうすると結論は……。
『諸君』
南部博士から通信が入った。
『現時点で集まった情報では、我々にも『未確認飛行物体』だと言うより他にない。
 ご苦労だった。帰還してくれたまえ』
「ギャラクターだと断定する材料が全くなかったと言う事ですね?」
健が訊いた。
『その通りだ。ギャラクターでも、妨害電波なしでレーダーにも反応せず、急に消える事などはまだ出来まい』
「レーダーに反応していなかったのは、未確認飛行物体が妨害電波を出していたと言う事なんですかね?」
ジョーが言った。
「でも、そう言った形跡はなかったわ」
『それも残念だが結論は出せない』
「解りました。帰還します」
結局、科学忍者隊の出動は無駄に終わった。
未確認飛行物体の分析に一役買ったと言っても良いが、国連軍にも出来る事ではあった。
「まあ、こんな出動もあってもいいか…」
ジョーが溜息混じりに呟いた。
「おいら達、こんなに近くでUFOを目撃したんだぜ!凄い事だよ、これ」
甚平は興奮していた。
「そうだな。宇宙人が実在して、ワープの技能も持っていて、どこか違う星から地球にやって来た。
 そんな事が現実に起こったと言う事か」
ジョーも同意した。
「まあ、飽くまでも『未確認飛行物体』だからな。何者か判別出来なかっただけかもしれない」
健が言った。
「凄かったなぁ〜」
甚平はまだ興奮している。
「まあ、いいじゃねぇか。ギャラクターじゃなかったんだし、後は帰るだけさ」
「そうだな。パトロールに出たと思えばいい」
健が頷いた。
「ほい、じゃあ、帰ろうかのう」
竜がゴッドフェニックスのスピードを上げた。




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