『土砂降りの雨に濡れて』

ジョーはついに潜りの医者に自分の病状を診せた。
医師は頭痛と眩暈を訴えているのに、レントゲンも撮らなかった。
流石に潜りだけの事はある。
しかし、ジョーは後悔していた。
G−2号機でトレーラーハウスに戻って、じっと土砂降りの雨に濡れて立ち尽くしていた。
病気の事が知れて、科学忍者隊から外される事を一番恐れていた。
それで無免許の医師に診て貰う事にしたのだが……。
やっぱり今更自分の病気を知っても仕方がないか、と思い始めていた。
知った処であの医師に治療が出来るのか?
いや、治療の方法があるのか?
冷たい雨にじっと耐えていた。
それから我に返り、トレーラーハウスの中に入って、ベッドの縁に座った。
今更病名を知って、どうなる物でもない。
彼はそう思った。
診察を取り消して貰うべきかと考えた。
潜りだけあって、なかなかずる賢い医者だ。
一筋縄では行かないかもしれないが、それが一番良さそうだ。
ジョーは悶々と考えた。
病名を知って、治療する術があればそれが一番良いのではないか。
正規の医師に診て貰うのが一番良いのだが、それでは南部博士達に知られてしまう事になる。
ジョーは悩んだ末に潜りの医師に診せた。
あれだけの診察で数日後に何が診断出来ると言うのか。
非常に難しいケースだと言っていた。
そうならば、治らない可能性だってある。
自分には医者に行って時間を無駄にしている場合ではないのではないか。
ジョーはそう考えたのだ。
悲観的にはなりたくはないが、どうせ治らないのなら、最後まで最前線で闘っていたい。
病気の事で悶々とするよりも、闘って忘れていたい。
この頃、症状は更に悪化している。
トレーラーハウスの中や、G−2号機の中で走行中に発作を起こす事も多々あった。
ジョーは濡れた身体を拭こうともせずに、じっとベッドに座っていた。
このままでは、またいつか任務中に失敗を起こす可能性はあった。
しかし、隠し通さなければならない。
治療法が確立出来ないのであれば、自分が強い意志で病気を身体の中に抑え込むしかない。
外に出さないように耐え切るしかなかった。
それは途轍もなく辛い事だろう。
でも、ジョーはその覚悟を決めるしかなかった。
病気を治す手立てがないのなら、そうするしかない。
潜りの医者に診て貰った事は失敗だった。
ただの無駄足に過ぎない。
それでは、取り消しに行くしかないか。
ジョーはそう思って、枕の下に挟んであったブレスレットを手に取った。
再び土砂降りの雨の中に出る。
傘は差さない。
そのままG−2号機に乗り込んで、急発進した。

潜りの医師の処に着くとまさかのギャラクターの女隊長と、例の医師が接触しているのを目撃した。
ジョーは怒りが込み上げるのを抑え切れなかった。
自分はギャラクターの手先に病状を診せようとしていたのか!?
潜りの医師を殴り飛ばし、女隊長が企んでいる意図を聴き出した。
すぐに変身して女隊長の車を追った。
その後、まさかのメガザイナーの再登場で、ジョーは正体を知られる事になった。
健達に通信をしてあったので、危ない処を免れ、彼はエアガンでメガザイナーを破壊する事に成功した。
病気の上に、正体まで知れてしまった。
しかし、ジョーは何も恐れなかった。
恐れるのは病気の発覚だけだった。
それだけは避けなくてはならない。
幸いにして、その後、ギャラクターは動かなくなった。
何か最後の大規模な作戦を準備しているに違いない。
南部博士からは出動の命令はなく、病気療養するには丁度良かった。
しかし、ジョーは大人しくはしていなかった。
死への恐怖、それを吹き飛ばす為に、ジョーはサーキットで走る事が増えたのである。
そして、トレーラーハウスに戻ると体力維持の為に寝込んだ。
気が張っている時は何とか身体が持った。
この方法で自分の身体を持たせるしかない。
ジョーはそう思った。
任務中には決して倒れまい、と心に決めたのである。
身体は限界に来ている事は解っていた。
でも、戦列から抜ける訳には行かなかった。
自分の最後の意地でもある。
ギャラクターに復讐してやるんだ。
その思いはずっと抱えて来た。
その時が近づいている。
科学忍者隊にいてこそ、そのチャンスは訪れる。
だからこそ、自分は科学忍者隊にいなくてはならない。
仲間達に、南部博士に、病状を知られては困るのだ。
それを徹底しなければならない。
その覚悟たるや、凄まじいものがあった。
齢18の少年が、抱えるような覚悟ではなかった。
それでも、やるしかない。
ジョーは本懐を遂げる為に、それをやり遂げなくてはならないのだ。
苦しい選択だと思う。
それでも、自分が生きて行く価値は、ギャラクターを斃す事、一点にある。
正規の医者に診せるのは、ギャラクターを斃してからでいい。
治療はそれからすればいいのだ。
もしも、助かる見込みがあるのであれば……。
自分の死と引き換えにしても、彼にとって本懐を遂げる事はそれだけ重要な事だった。
両親の仇。
自分の身体に流れる血へのどうしようもない嫌悪感。
それらを解決するには、ギャラクターを斃さなければならないのだ。
彼にとっては、それが切実な願いだった。
ジョーも自分に死が迫っている事は感じ取っていても、余命が余りにも少ないと言う事はまだ知らない。
それを知ったら尚更ギャラクターへの復讐を急ぐ事になるだろう。
恐ろしい運命が彼を襲おうとしていた。
ギャラクターは最後の作戦に動き始めていた。
ジョーはその渦の奔流に呑み込まれて行く。
でも、自分の力で切り拓き、闘い抜いて死んで行く事を選択するのである。
どうせ死ぬのなら、と思うと人間何でも出来る。
ジョーはギャラクターの大規模な基地に乗り込んで行く事になるのだ。
それが本部だったのは、彼にとっては運が良かったと言えるだろう。
やっと本懐が遂げられる。
そう思ったに違いない。
そして、最後に彼はそれを遂げるのである。
本人が知らずに逝った事だけが悔やまれる。




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