『王宮警護(4)』

王宮の侍従達は、皇族の食事が終わってから、『賄い』を摂る。
皇族達程の贅沢品ではなかったが、それでもかなり高級な食事が出た。
ジョーはこれだけの物を国民に分けてやれたら、と思いつつそれを食した。
「ジョー、食事が終わって、侍従達が一旦捌ける。その時を狙って国王の部屋に飛び込むぞ」
健が隣から声を掛けて来た。
「解った。やるしかねぇな。王宮の中でだけこんなに高級な食事をしやがって。
 外の国民達がどれだけ苦しんでいると思っているんだ」
「まあ、今は抑えろ。食事が終わった後なら、まだカッツェはいるだろう」
「ああ、何かしようと企んでやって来たのだろうからな」
「いよいよ財宝を運び出そうと言う計画だろうな」
「多分な。最初から狙いはそれだろうぜ」
ジョーは忌々しそうに言った。
ジュンはメイド達の固まりにいる。
眼で合図を送った。
決行の時が近づいている事は彼女にも伝わった。
ジュンは頷き返して来た。

3人は一旦地下3階に集まり、侍従とメイドの衣装を脱ぎ、バードスタイルに変身した。
下にいつもの服を着込んでいたのだ。
「一気に階段を上がって行く。国王の部屋は最上階の3階だ」
「国王の衣装を持って行こうぜ」
ジョーは鼻を摘みながら、衣装の一部を脱がせた。
上着があれば充分だ。
これが本当の国王が殺されたと言う証拠になる。
「よし、行こう!」
3人は階段を駆け上り始めた。
甚平と竜にも決行を知らせてある。
いざとなったら、ゴッドフェニックスで王宮の庭に飛び込んで来る手筈となっていた。
擦れ違う侍従達が何事かと驚いている。
「科学忍者隊だ!」
健はそれだけ叫んで、道を空けさせた。
王宮内にも科学忍者隊の名は轟いている。
しかし、何故科学忍者隊が?と思っている者が多かった。
3階に近づくと、案の定マシンガンを持ったギャラクターの隊員達が出て来た。
科学忍者隊が来たと言う報告を受けて、出て来たのだ。
それでなければ、側近の振りを続けたに違いない。
「貴様らには用はねぇんだっ!」
ジョーはそう叫んで回し蹴りを与えた。
4人の隊員が一気に吹き飛ばされた。
そうして、3人は国王の部屋へと躍り込んだ。
「ベルク・カッツェ!国王のご遺体は俺達が見つけた。
 貴様が変装してこの王宮に入り込んでいる事は、とっくに割れているんだ」
「良くそれが解ったな。誰のタレコミかは知らんが」
国王の姿をした人物がカッツェの声で喋った。
「国際警察にも切れ者がいてなぁ。そいつが俺達に仕事を依頼して来たんだ」
ジョーがニヤリと笑った。
「ふん、何だか知らんが、科学忍者隊が此処で首を突っ込んで来たのは計算外の事だった。
 しかし、我々は屈しない。今に見ていろ。作戦は既に始まっている」
カッツェは変装を解かぬまま喋っている。
「軍隊を呼べ!こやつらを反逆者として捕らえさせるのだ!」
側近の姿をしている隊員が動いた。
だが、ジョーがそれを許さなかった。
エアガンを構え、動ける物なら動いてみろ、と無言の圧力を掛けたのだ。
「竜!来いっ!」
健がブレスレットでゴッドフェニックスを呼んだ。
軍隊が詰めている王宮の大きな庭に、すぐにゴッドフェニックスが滑り込んで来た。
外はパニックになっている。
「科学忍者隊じゃ!国王は既に殺されている。おら達がそれを解決する為に駆け付けたんじゃ!」
トップドームから竜が叫んだので、軍人達は混乱している。
科学忍者隊を信じるべきか、自分達の『雇い主』を信じるべきなのか……。
『それは本当だ!』
王宮の外から拡声器で声が上がった。
それがこの国の首相だったので、軍隊は一様にざわついた。
『科学忍者隊に任せて欲しい。今、王室は未曾有の危機に陥っているのだ。
 このままだと財宝をギャラクターに持って行かれてしまうぞ!』
首相が訴えた。
その間に甚平と竜は王宮の中へと消えた。
3階だと健から聴いているので、すぐに5人は合流した。
「外で騒ぎを起こしやがって!」
カッツェが憎々しげに叫んだ。
「当たり前じゃねぇか!王宮の財宝は国民の物だ。
 今、未曾有の飢饉が襲っている事を知らねぇとは言わせねぇぜ!」
「飢饉など私には関係ない。ギャラクターはこの国の財宝を戴いたらさっさと消えてやる。
 余計な事をしてくれたものだ」
「余計な事だと!?」
健が叫んで、カッツェに掴み掛かった。
側近に変装している隊員が「国王陛下に何を!」と叫んだが、もうそれは虚しい嘘に過ぎなかった。
健をカッツェから引き剥がそうとした隊員は、ジョーに殴られて吹き飛んだ。
健はカッツェを思いっきり握り拳で殴った。
カッツェは壁に激突した。
それでも変装は解かなかった。
侍従達が集まって来ていた。
科学忍者隊が国王陛下に暴行を加えているかのように見えた筈だ。
だが、彼らも外での騒ぎを聞きつけていた。
国王陛下が殺されていると言う首相の声を聴いていたのだ。
「見ろっ!これが地下3階にあった腐乱死体が着ていた上着だ!」
ジョーが侍従達にそれを見せた。
「うっ!」と顔を伏せる者達がいる。
間違いなく、国王が着ていた衣服だったのだ。
「こいつはベルク・カッツェと言う、ギャラクターの首領だ!」
ジョーが叫ぶと、ベルク・カッツェはついに変装を解いた。
紫の衣装が翻った。
「ハハハハハハ!もうそろそろ財宝の運び出しも終わった頃だろう。
 時間稼ぎも大変だったな」
「残念だな、ベルク・カッツェ!軍隊が王宮の中に入り込んで、それを今、阻止している」
健が叫んだ。
「何だと?」
「おら達が軍人達を王宮に入れたんじゃ」
竜が説明した。
カッツェは狼狽えた。
「逃げるか、カッツェ!そうはさせないぞっ!」
健がカッツェにダッシュして体当たりし、壁にダンっと叩きつけた。
ジュンと甚平がそれを囲んだ。
健は怒りに任せて往復ビンタを喰らわせた。
そして、重いパンチを鳩尾に叩き込んだ。
カッツェは身を追って床に這い蹲った。
「もう終わりかい?今度は俺の番だぜ」
ジョーが聳え立つ塔のように、カッツェの前に立ち塞がった。




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