『一発当て屋(2)』

科学忍者隊は簡易宿泊所で一夜を明かした。
翌日は幸いにして石油の取引が行なわれる日であった。
取引所にはアラビア特有の衣装を着た者か、スーツ姿の者が目立つが、中には海外からの見学組の姿があったので、彼らは手荷物検査を受けただけで、堂々と入る事が出来た。
元々手荷物など持ってはいない。
忍び込む程の事ではなかったのである。
「こんなに簡単に入り込めるとは拍子抜けだな…」
ジョーが呟いた。
「まあ、そう言うな。とにかくマネックスと言う石油商を探そう」
健が言った。
「ラジャー」
5人は散った。
間もなく甚平から連絡が入った。
『居たよ。5番の取引所だ』
それで科学忍者隊の5人は5番のコーナーに集合した。
確かに写真で見たマネックス・マホーンがそこにいた。
頭上には電光掲示板がある。
マネックスは高値を要求していた。
彼が手元のボタンを押すと、電光掲示板に数字が現われるようになっている。
取引相手は国側の人間だった。
そうは簡単に高値で買い取ろうなどとはしない。
するとマネックスは自分の扱っている石油の純度について長々と説明を始めた。
他の連中よりも品質の良い物を扱っているのだから、高値で買うのは当たり前だ、と言う理論だ。
確かにそれは今までの実績で証明されていた。
マネックスは最初から金額を吹っ掛けていたので、少し下げて表示した。
そうして、結局は自分の思い通りの価格で取引を終えたらしい。
満足気に鷹揚な態度で帰って行った。
移動には黒塗りの高級車を使っていた。
ゴッドフェニックスから分離していたG−2号機、G−3号機、G−4号機でそれを追う事になった。
健はジョーの車のナビゲートシートに乗り、竜は甚平の車に乗り込んだ。
「マネックスは相当警戒している。気づかれないように気をつけるんだ」
健が全員に指示を出した。
「俺は尾行向きには出来ちゃあいねぇからな」
「ジョー、そうは言うな。これは大切な任務だぞ」
「解っているさ。向こうがただの若い観光客だと思っていてくれればいいんだがな」
『見て!街道を逸れようとしているわ』
ジュンが言った。
「どうやらウランの在り処に案内してくれるようだ。少し距離を取ろう」
『ラジャー』
3台のメカはそれぞれ減速した。
尾行に気づかれては元も子もない。
山道に入って行ったマネックスの車に、発信機を付けておくべきだった、とジョーは思った。
それでも遠目に動きが解るぐらいの距離を保った。
そして、車が停まったのを確認して、彼らもそれぞれのメカから降りた。
距離はあったが、これ以上、車を近づけない方がいい。
これからは忍んで現場に急行するのだ。
「バード・ゴー!」
5人は虹色に包まれて変身した。
眼にも止まらぬ速さで彼らは現場へと走った。
そして、洞穴を発見した。
「あの中だな……」
健が呟いた。
5人はサッと中に侵入した。
話し声がしている。
「誰かと電話で話しているようだぜ」
ジョーが含み声で言った。
洞穴に声が反響して、話の内容までは聴き取れない。
恐らくはISOかギャラクターに電話をしているのだろう。
「とにかくウランを確認しよう」
「放射線を浴びるぜ」
「そうよ。あの人達だって、防御服すら着ていない。きっと被曝しているわ」
ジョーとジュンが言った。
「物事を知らな過ぎるのさ」
ジョーは吐き捨てるように言った。
「あいつらが被曝しようが何だろうが、自業自得さ。
 だが、俺達まで被曝するのはごめんだぜ」
「確かにそうだな。だが、此処に純度が高いウランがあると言う事が解らないと、博士に報告が出来ないぞ」
「俺達にも防御服はねぇ。一旦戻って、防御服を持って出直すべきだ」
ジョーは冷静に言った。
「そうするしかないな」
健は決断をし、一旦ゴッドフェニックスで基地に戻る事にした。
場所は確認したのだ。
そして、今、まさにISOに電話が入っているかどうかを南部博士に確認すれば良いのだ。
『うむ。確かに日時の連絡があった。明日の現地時間18時だそうだ』
「ウランがあるらしい洞穴を見つけましたが、危険なのでそれ以上近づけませんでした。
 確認する為には一旦防御服を取りに戻る必要があります」
『うむ。確認はしなくて結構だ。奴は今まさにウランの前に立っていると言っていた』
「高純度の物かどうか確認しなくてもいいんですか?吹っ掛けているだけかもしれませんよ」
ジョーが言った。
『それは既に鑑定している』
「なる程」
健が納得が言ったように答えた。
「マネックス達は知識がないのか、防御服すら着ていません。
 恐らく放射線に被曝しているものと思われます」
『それは自業自得だ。放っておきたまえ』
南部博士はジョーと同じような事を言った。
「では、取引の時間になったら、科学忍者隊として逢いに行けば良いのですね」
『そうだ。明日の取引にはギャラクターも出て来る。充分に注意してくれたまえ』
「ラジャー」
そうして、一旦任務を終える事になった。
「これからどうする?ウランを確認する必要がなくなったから、取引までにする事もなくなったぜ」
ジョーが言った。
「そうね。まだ1日半もあるわ」
「基地に戻って出直すって方法もあるわい」
「でも、アラビア料理、旨かったなぁ〜。おいらは好きだな」
「それを言われるとおらも残りたくなったぞい」
「残って、マネックスの動向を探らないか?」
健が言った。
「ああ、そいつはいい考えだぜ」
ジョーはそれに同意した。
丁度マネックスが車に戻って来た様子が遠くから見て取れた。
「じゃあ、尾行を続行ね」
ジュンはそう言って、G−3号機に跨った。
全員が変身を解いた。
それぞれがメカに乗り込み、マネックスの車を遠目に尾行する事になった。




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