『一発当て屋(3)』

マネックスの動きを探る事にした科学忍者隊だが、ジョーがこんな事を言い出した。
「ウランだがよ。放っておいたらギャラクターが場所を突き止めて、勝手に奪って行くと言った事にはならねぇか?」
確かにそれはある。
充分に可能性がある。
ギャラクターが黙って指を咥えて見ている筈がない。
「そうだな。確かに迂闊だった。そこまで考えるべきだった」
健が答えた。
「俺は基地まで防御服を取りに戻る。そして、あの採掘場を張り込むつもりだ」
「解った。ゴッドフェニックスで戻った方が早い。一旦全員で戻ろう。
 全員分の防御服も必要だろう」
「そうだな」
と言う事で一旦全員で基地まで戻り、出直して来る事になった。
ジョーは早速防御服を着込んでから変身した。
そして、G−2号機でゴッドフェニックスから分離した。
『1人で大丈夫か?』
健が訊いた。
「マネックスが警戒している筈だ。大人数で行くよりも、1人の方がいいだろうぜ」
『解った。気を付けて張り込んでくれ』
「ギャラクターが来たら、盗掘を防がなければならねぇからな。覚悟はしているぜ」
『もう1人付けようか』
「いや、目立ちたくはねぇんだ。ギャラクターにもマネックス一味にもな」
『なる程な。無理はするな。何かあったらすぐに俺達を呼び出せ』
「解ってるよ」
ジョーはそう答えると、G−2号機を猛スピードで出発させた。
ゴッドフェニックスは街からは遠くに着陸していた。
「ジョー1人で大丈夫かなぁ?」
甚平が呟いた。
「それなら貴方も行ったら?」
ジュンがからかうように言った。
甚平は街中に残って、美味しい料理を口にしたいのだ。
それぐらいの事が解らないジュンではなかった。

ジョーは洞穴の随分手前で、岩に隠すようにしてG−2号機を停めた。
此処からは歩いて行く。
洞穴の手前に丁度良い塩梅の岩があった筈だ。
そこに身を隠して、ギャラクターを張り込むつもりだ。
もしかしたらマネックスの手の者も隠れて警護しているかもしれない。
しかし、いざギャラクターが出て来たら、彼らは役に立たないに違いない。
科学忍者隊がウランの在り処を知っている事がバレようとも、ギャラクターにウランを持って行かせる訳には行かないのである。
ジョーの眼の付け処は確かだったと言える。
ギャラクターも独自にマネックスをマークし、ウランの在り処をとうに知っている筈なのである。
取引まで1日以上ある事から、先に奪い出してしまおうと考えない訳が無い。
やがて大型ヘリコプターがやって来た。 3台もいる。
そこから防御服に身を包んだ隊員達が、縄梯子を伝って降りて来るのが見えた。
「健、やっぱり来やがったぜ。ヘリで大仰に登場だ」
『応援に行こうか?』
「いや、大丈夫だろうぜ」
ジョーは通信を切って、迫り来る闘いに備えた。
最初に降りて来た隊員達はまずは空のケースを持って洞穴の内部に入り込んだ。
それをバケツリレーのようにして、ヘリに積み上げて行こうと言うのである。
3台の大型ヘリがいるので、列が3列出来上がった。
「残念だが、勝手に持って行って貰っては困るんでね」
ジョーはそう言って飛び出した。
ギャラクターの隊員達の動きが一瞬止まった。
しかし、ジョー1人しかいない事を知ると、一気に彼に押し寄せた。
ジョーは長い脚を回転させて、敵を一気に払い除けた。
身を低くすると、そのままの体勢からパンチを繰り出す。
立つ時の勢いが付いて、威力は倍増だ。
ジョーは羽根手裏剣を丁寧に飛ばして、何人もの敵の手の甲を突き破る。
元々作業の為に武器を持っていなかった隊員達だが、これで戦意は喪失して行った。
まだ大型ヘリの上にいた隊員達がマシンガンを投げ渡すが、既に手を負傷していて闘う事が出来ない。
その間にジョーは洞穴の中に入った隊員達を一掃しに行く。
既にウランの採掘を始めていた。
「危ねぇ危ねぇ。張り込んでいて正解だったな」
ジョーはそう言うと、腰からエアガンを抜き、それぞれを撃ち抜いた。
死にはしない。一時的に意識を失うのみだ。
「おい。中の奴らを連れ帰ってやれ。こんな処に残しておいたら、マネックス一味に採掘に来た事がバレちまうぜ」
ジョーは表にいた隊員達にそう告げた。
確かに引き時だと感じたのか、チーフの制服を着た隊員が「引け」と命じた。
それで外にいた隊員達は、中で倒れている仲間の救出に当たった。
「また来るつもり満々だろうが、科学忍者隊が出張っている事を忘れるな。
 必ずベルク・カッツェに報告しておけ!」
ジョーはそう言って、去って行く3台の大型ヘリを見送った。
そこに人の気配があるのをジョーは感じ取った。
「まだ残ってやがったのか?」
振り返ると、銃を構えた黒服の男が1人立っていた。
「どうしてギャラクターを追い払った?どうして科学忍者隊はウランを奪おうとはしないのだ?」
男はジョーにそう訊いた。
「科学忍者隊はギャラクターとは違って、汚ねぇ手は使わねぇ。
 取引までに問題のウランが奪われては適わねぇから、こうして張り込んでいただけさ。
 おめぇ達がいたとしても、ギャラクターにやられるのがオチだからな」
「ふうん。マネックス様に報告しておこう。だが、行け。
 もう此処に張り込んで戴かなくて結構だ。
 国連軍が来ているようだしな」
「ほう〜。俺はお払い箱って訳か。まあいい。此処は去ってやる。
 明日の取引まで精々楽しみにしているんだな」
「捨て台詞は結構。お帰りはあちらだ」
若い黒服の男は、そう言って、洞穴の出口の方を手で指し示した。
「解ったよ……」
「ギャラクターを追い払ってくれた事には感謝する。
 国連軍が来たのもISOの手配によるものだろう」
「そうだろうな」
「じゃあな。また明日だ」
「おめぇら、言っておくが防御服を着ないと、ウランの放射線に被曝するぜ。
 恐らく既に被曝している。
 『一発当て屋』さんがそれを知らなかった事に驚いたな。
 それよりも部下の生命なんかどうでもいいか。
 いや、自分自身も防御服なしでウランの洞穴に入っていたっけな」
ジョーは皮肉な笑みを浮かべて、その場を立ち去るのだった。




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