『一発当て屋(5)』

彼らはゴッドフェニックスに戻って、ナンデス山脈の北西15kmの地点がどこなのかを確認した。
それは古い炭鉱の跡らしかった。
早速南部博士と通信する。
『そうだ。その炭鉱跡に間違いない。今、情報部員に事前調査をさせているので、間もなく現場の写真が届くだろう』
「炭鉱と言えば、隠れる処はいくらでもありそうですねぇ」
ジョーが腕を組んで言う。
『その通りだ。マネックスはギャラクターにとって都合の良い場所を選んでくれたものだ』
「自分達が潜んでいる作戦なのかもしれませんね」
健が言った。
『そうだとすれば、ギャラクターに一網打尽にされてしまう事だろう』
「既にウランの在り処はギャラクターにも知られていますしね」
ジョーには猜疑心が沸いていた。
この夜中にギャラクターが盗掘をしないと言う保障がどこにあるのか?
いくら国連軍が警護しているからと言って、守り切れるものなのか。
それを言うと、南部博士はジョーを安心させるように言った。
『国連軍は最新鋭の赤外線カメラを使って四方八方から監視している。
 こっそり盗掘に来ても見逃す事はないのだ』
「逆襲されなければいいんですがね」
ジョーは呟いた。
取引は明日の18時だ。
それまでに当のウランを盗まれては何の意味もない。
ギャラクターが手を拱いている筈がない、とジョーは思うのだ。
「でも、博士。ジョーの心配も解ります。ギャラクターが指を咥えて見ているとはとても思えません」
『そうだな。今夜中に現われるだろう。国連軍には充分警戒するように指示してある』
「国連軍で大丈夫かなぁ?おいら達が行った方がいいんじゃないのかなぁ?」
甚平が心配そうに呟いた。
「さっきは早く寝たいとか言っていた癖に」
ジョーがからかった。
『今、ゴッドフェニックスに戻っているとなると、移動するのに時間が掛かる。
 それに深夜の移動は目立ち過ぎるな』
「そうですね。博士の仰る通りだと思います」
健が答えた。
『では、諸君。明日に備えて今日は休んでくれたまえ。成功を祈る』
「ラジャー!」
そうして、科学忍者隊の5人はゴッドフェニックスの中で睡眠を取り、夜明けを待つ事になった。

ギャラクターは1度夜中にウランを盗掘に来たが、国連軍に追い返されたと言う報告が入った。
かなりの犠牲者が出たらしいが、国連軍は自分達の沽券を守って、しっかりと警護してくれたのだ。
朝食代わりに機内にある保存食を食べると、5人はゴッドフェニックスでナンデス山脈へと向かった。
炭鉱跡は広々としていて、ゴッドフェニックスを降下させるスペースが充分にあった。
「さて、竜は此処で待機していてくれ。俺達はマネックスの動きを探って来る」
「またおらは留守番かえ?」
「俺はあの黒服の男をマークしたい処だな」
「ジョーにはそいつを頼む。黒服の男と組んでいる太った男もな」
「ああ。何をやらかすか解らねぇからな。警戒しておくに越した事はねぇ」
「とにかくマネックスを探そう。その周辺にその男達もいる筈だ」
健が言い、竜を除く4人はゴッドフェニックスの外に出た。
G−2号機、G−3号機、G−4号機が分離し、変身を解くと同時にその擬態を解いた。
健はジュンのバイクの後ろに跨った。
『最初は石油の取引所だ』
「ラジャー」
ジョーは早速走り始めた。
取引所がある街に行く為には山を1つ越えなければならない。
なかなかの難所だったが、ジョーにとっては大した事ではない。
「健。こっちに乗り換えた方が良くねぇか?」
『まあ、この程度の事は何でもないさ』
「そうか?」
ジョーはその答えを耳にして、ガッチャマンの豪胆さにそんな心配は無用だったと改めて気づいた。
「余計な心配だったな。もうそろそろ山を越えられるだろうぜ」
『早く戻って炭鉱跡を点検しておく必要もある。少し急ぎたい処だな』
「手分けをすればいいさ。俺は最後まで残ってもいい」
『必要に応じてそうするか』
健も納得したように言った。

石油取引所の中は今日も多くの人がいたが、どれだけ探してもマネックスの一味を見つける事は出来なかった。
さすがにウランの取引の方が重大だと判断したのだろう。
「だとすれば、例の洞穴か?」
ジョーが呟いた。
「その可能性はあるな」
「行ってみようぜ」
「国連軍が張っている。変身して行かないと怪しまれるぞ」
「そうだな」
ジョーは短く答えた。
前日も車を停めた岩陰で、4人は変身した。
「マネックスは来ていませんか?」
「一味を含めて今日は1度も来ていない」
防御服を着た国連軍の大佐が答えた。
尊大な態度なのも仕方がないだろう。
こんなに詰まらない任務はないに違いない。
「マネックスは一体どこに消えてしまったのか……?」
「これじゃ動向を探るどころじゃねぇな」
「取引場所に戻るか」
「待って!あれを見て!」
ジュンが指を差して示した場所に黒塗りの車が見えた。
4人は素早く岩陰に身を隠した。
「マネックス一味だわ…」
「ああ、最後にウランを確認しに来たか」
健も言った。
相変わらず防御服なしで洞穴に入って行く。
「俺が黒服の男に教えてやったのに、懲りねぇ奴らだぜ」
ジョーは呆れたように言った。
彼らが驚く瞬間はその後に訪れた。
洞穴の中から銃声が轟いたのである。
「誰かが撃たれた!」
健が叫んだ。
それから男達がぞろぞろと出て来た。
国連軍が入れ替わるように洞穴の中へと入って行く。
軍の人間が2人掛かりで抱えて来たのは、マネックスだった。
既に遺体になっている。
「何て事だ!」
ジョーは叫んで、黒服の男を追おうとした。
「ジョー、止めておけ。どうせ取引の場に出て来るに違いない」
「奴らは『一発当て屋』よりも1枚も2枚も上手だった……。
 只者じゃねぇ事は感じ取っていたんだがよ」
「マネックスに取って変わって、取引に出て来るつもりだ」
「酷いわね」
「やり方が汚いよ」
ジュンと甚平もそれぞれが感想を述べた。
「ウランが出た時点で、裏切りを画策したんだろうよ」
ジョーは吐き捨てるように言い、決意の篭った瞳を前に向けた。




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