『訓練時代』

ちぇっ、健がリーダーか。
俺がリーダーだったら、好き勝手出来るのによ。
いや、待てよ。
リーダーってのは責任ある立場だから、好き勝手出来るとは限らねぇ。
俺のサブリーダーと言う立場の方が、自由自在に動けるんじゃねぇのか?
そうだな。
確かにそうだ。
こりゃあ、いい!
厳しい訓練を乗り越えて、力量では健に負けねぇぞ。
今日はバードスタイルでの、飛翔訓練だ。
高い塔からマントを使って飛び降りる。
もう俺は自由に飛べるぜ。
悔しい事に健もマントを自在に使いこなしていやがるがな。
実力が伯仲しているが、健を超す事が出来ねぇのが悔しいじゃねぇか。
俺が健より上を行っているのは、羽根手裏剣と拳銃の腕だけだ。
尤も健は羽根手裏剣を殆ど使いやがらねぇし、拳銃の訓練には余り乗り気ではねぇらしい。
比較対象にならねぇが。
マントを広げて跳ぶのは、鳥になった気分で気持ちがいいなぁ。
科学忍者隊は鳥をモチーフにしているから、全くその通りなんだが。
俺も健も着地には無事に成功したが、まだ他の3人は訓練が遅れているようだ。
ジュンはいい線を行っている。
甚平と竜はもう少しコツを掴む努力が必要だな。
辛うじて怪我はしねぇで済んでいるがよ。
何度でも、いろいろな場所から飛び降りさせられる。
塔からの飛翔訓練が終わったら、今度はヘリコプターからだ。
ヘリの高度はまだそれ程高くはねぇが、これをパラシュートなしで飛び降りろって言うんだから、このマントはよっぽどの飛翔能力が秘められているんだろう。
これで地上まで無事に降りられるのか?
さすがに無鉄砲な俺でも、少し躊躇した。
だが、健が行った。
くそぅ、負けてなるものか!
俺もすぐにマントを広げて飛び降りた。
コンドルのように滑空して行く。
良い滑り出しだ。
俺も健も南部博士の別荘の敷地内に無事に着地した。
続いてジュンも上手くやった。
甚平もちょっと危なかったが、何事もなく、着地する事が出来た。
さて、竜は?
どん、と尻餅を着いたが、怪我はしていねぇ。
全員無事に地上に到達したのだ。
南部博士が別荘のテラスから厳しい眼でそれを見ている。
俺達はこれからこの訓練を気が遠くなる程、続けるのだ。
ゴッドフェニックスへの合体訓練、飛行訓練。
いずれはゴッドフェニックスから敵艦に飛び降りる事も視野に入れなければならねぇ。
だからこそ、こんな訓練を繰り返しているんだ。
南部博士は次回からは指定した場所に舞い降りて貰う、と言った。
確かにそれでなくては、マントの意味を成さねぇ。
行きたい場所に行けるからこそ意味が出て来るんだ。
毎日の訓練は時々嫌になるが、ギャラクターを斃す為に必要な事だ。
俺はやってやるぜ。
特に健には負けたくねぇ。
リーダーの座なんかどうでもいい。
あいつにはその器がある事も解っている。
南部博士の人選に間違いはなかった。
俺は俺で好きなようにやってやる。
せめて闘う技量だけは、健に負けたくねぇ、と言っているんだ。
此処で食事休憩になったので、俺達はバードスタイルを解いた。
「マントで飛ぶのって気持ちがいいなぁ〜」
甚平が夢中で飯を喰いながら言った。
あの小せぇ身体に良く入るものだ。
それに膨れた腹で午後の訓練をこなせるんだから、大したものだと思う。
「おら、尻餅を着いてしまったわい。南部博士に注意されてしもうた」
「次はしっかりやるんだな」
健が言った。
俺は何も言わなかった。
そんな事より、午後の個人訓練の方が気に掛かっていたからだ。
これまでは普通の拳銃で訓練を行なって来たのだが、今日は俺達にそれぞれの武器が手渡されるらしい。
南部博士が考え抜いて、各自に合った武器を考え出したそうだ。
俺には羽根手裏剣もあるから、これで2つ目の武器と言う事になる。
銃と言えば、親父とお袋が殺された時に握って以来、今回の訓練で嫌と言う程使わされて来た。
最初から違和感はなかった。
手にしっくりと来る感じだった。
拳銃での訓練は昨日まで全員に課されていたが、これからはそれぞれの武器で訓練室にて訓練を行なう、と言われていた。
俺の武器は何だろう?
拳銃での訓練では、1人頭角を現わして来たつもりだ。
南部博士も俺の拳銃の腕には眼を細めていた。
何か元々の素質があったのかもしれねぇ。
射撃の名手と言っても過言ではない、と言われた。
健よりも上を行けた事以外、別に嬉しくも何ともなかった。
俺はあの女隊員を撃ったのかどうか、覚えていねぇんだ。
射撃の名手なら1発で斃せた筈だ。
だが、爆発に巻き込まれた記憶しか残ってねぇ。
俺は撃つ前にやられたのかもしれねぇ。
それなら仇討ちは出来なかったと言う事だ。
あの女隊員を何とかしてやりてぇ!
俺はギャラクターに復讐してやるんだ。

午後の訓練に入って、健にはブーメランが、俺と竜にはエアガンが、ジュンにはヨーヨーが、甚平にはアメリカンクラッカーがそれぞれ与えられた。
南部博士に使い方の説明を受ける。
俺のエアガンは、いろいろなキットを付け替える事で、様々な使い道がある事が解った。
こりゃあいい。
1日も早く自分の物にして、全ての機能を滞りなく使い尽くしてやる。
まずは手にしてみると、俺の手にしっくりと来た。
以前から手に馴染んでいた武器、と言う感じがした。
南部博士が訓練室に人形を5体用意してくれて、それぞれが武器を試す事になった。
竜にはその身体に似たずんぐりとしたエアガンを支給されたが、余り気乗りがしねぇようだった。
「竜、どうした?訓練はしねぇのか?」
「いんや。おら、銃よりも力自慢で闘いたいんじゃ」
「まあ、勝手にしろ」
俺はそれっきり自分のエアガンの機能を試す事に熱中した。
三日月型キットは、戦闘の時にこんな使い方が出来るな、とシュミレーションもした。
こいつと羽根手裏剣が俺の身体の一部として機能するように徹底的に使いこなす。
絶対にやってやるぜ。
明日は午前中にまた飛翔訓練をして、午後は戦闘術の訓練が入っている。
出来れば今日の内に大まかな部分は試しておきてぇ。
全てのキットを取り付けてみた。
こいつは使える武器だぞ。
信号弾まで発射出来るんだ。
使い方に幅がある。
それだけ扱いは難しいが、自分の身体の一部のように使えるようになれば、俺はもう自由自在だ。
俺にはそれが出来る筈だ。
理由はねぇが、その自信があった。
三日月型キットは後方の敵にも効果がある。
まさか、こいつが飛び出すとは思わねぇだろう。
それにワイヤーが付いているから、配管などに絡ませてぶら下がる事も出来る。
いろいろな使い道を想像するだけで、わくわくするぜ。
俺はその日の午後だけで、ほぼ全ての使い道を試した。
そして、早くも自分の物にした。
嬉しい事だった。
隣の健もブーメランをすっかり使いこなしているようだ。
やっぱりこいつは只者じゃねぇ。
でも、俺だってやってやる。
健には負けねぇぜ。
もうすぐ俺と健は18になる。
そろそろギャラクターが動き出すとも言われているし、俺達の活躍が期待される日がきっとやって来る。
その日までしっかり訓練をして、完璧にしておくんだ。
俺は絶対にやってやる。
ギャラクターに復讐する為に。




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