『火力発電メカ』

科学忍者隊は南部博士の命令で、S地区の海上でゴッドフェニックスに集合していた。
『諸君。目撃者によると今度のメカ鉄獣は、朝早くにゴミ集積場からゴミを吸い込んで、それをエネルギーにしているらしいのだ。
 恐らくは体内で火力発電をしているものと思われる』
「随分省電力なメカですねぇ」
ジョーが腕を組んで言った。
『しかし、街を破壊して回っている事には違いがない』
「解りました。ゴッドフェニックスは、エスニタル市に急行します」
『諸君の成功を祈る』
サブスクリーンから南部博士の姿が消えた。
「エスニタル市に着いたら、スクリーンにメカを拡大投影してくれ」
「ラジャー」
ゴッドフェニックスは間もなくメカ鉄獣の姿を捉えた。
掃除機のような形をしている。
「あの巨大な掃除機の中で火力発電をしてるってぇのか!」
ジョーが拳を握り締めた。
「奴らのエネルギーは無限にあると言う事だぞ」
健も言った。
「エネルギーが切れて移動する時が攻撃のチャンスだ。
 残念だがエスニタル市はもう救いようがねぇぜ」
ジョーは悔しそうだ。
だが、彼が言っている事は確かに正しい。
もう既にエスニタル市は壊滅状態にあった。
「だが、この市の膨大なゴミを吸収した後だろう。
 エネルギー切れまでは待てないぞ」
「バードミサイルをお見舞いしてやるか」
「次の標的に移動する時に攻撃しよう。
 もう破壊し尽くしたからそろそろ移動するだろう」
「健!メカが飛び出したぞいっ!」
竜が叫んだ。
「竜、追うんだ!」
「火力発電の設備には限界があるに違いねぇが……、中に入って破壊して来るか」
ジョーが言った。
「おいら、嫌だよ。臭くてやっていられないや」
甚平が駄々を捏ねた。
「では、行くな!ジョー、俺と2人で行くぞ」
「ああ、望む処だ」
「竜、掃除機のメカに近づけろ」
「ラジャー」
竜はゴッドフェニックスを掃除機メカに近づけた。
トップドームに出た健とジョーはお互いの顔を見やってから、敵のメカへと跳躍した。
空気孔から中へと潜入する。
「確かに臭ぇな……」
ジョーが思わず鼻を摘んだ。
健も同様にしている。
「仕方がねぇ。俺が中に入ろうって言ったんだからな」
「火力発電の装置を探そう。恐らくは吸引部分の近くにある」
「ラジャー」
2人は別れて探す事にした。
侵入に気づいた敵兵が現われる。
ジョーは羽根手裏剣の束でそれを一掃すると、一目散に駆け出した。
またマシンガンを持った敵兵が現われた。
ジョーは長い脚で素早く回し蹴りをお見舞いする。
それは敵兵の首に入った。
敵兵は堪らずに崩れ落ちた。
「おい!火力発電装置はどこだ!?」
襟元を掴み上げて訊いたが、相手は話す事が出来ない。
「くそぅ、やり過ぎたか…」
ジョーは苦笑しながら進んだ。
臭いにおいが増して来た。
「そろそろだな」
慎重に進む。
この辺りにいる敵兵はさすがにマスクを着けている。
警護をしている敵兵の肩に後方から手を掛ける。
そのまま敵兵を壁から引き剥がすように投げ付けた。
もう1人の隊員に当たり、2人共伸びてしまった。
「どうやら此処らしいな」
ジョーが扉をこじ開けると、猛烈な臭いと熱い空気が同時に吹き付けて来た。
「健、見つけたぜ。凄い火の勢いで近づけねぇ」
『すぐに行く。部屋の入口に爆薬を仕掛けよう』
「解った!」
健は言葉通りにすぐにやって来た。
「この通りだ」
ジョーが扉を開けてみせると、健も頷いた。
「この扉の内側に爆弾を仕掛けて逃げるんだ」
2人はブーツの踵から爆弾を取り出した。
それを扉の内側に取り付け、全力で扉を閉めた。
「健、後は司令室だ」
「いや。此処だけで行けるだろう。
 後はゴッドフェニックスに戻ってバードミサイルで破壊する」
「解ったぜ。その役目は俺が貰った」
「好きにするがいい」
2人は脱出を始めた。
後方で爆発が起き始めた。
メカが急にフラフラと飛び始める。
2人は壁際に叩きつけられた。
しかし、何とか脱出口である空気孔を目指して走り続けた。
「空気孔だぜ」
「ああ。脱出だ!」
2人は空気孔に向かって飛んだ。
掃除機メカの表に出た処で、竜を呼んだ。
「竜、俺達を拾ってくれ」
『ラジャー!』
ゴッドフェニックスが近づいて来た。
掃除機メカがフラフラしている。
危ない状況だったが、健とジョーは跳んだ。
無事にトップドームまで辿り着く。
「やったな、ジョー」
「ああ、後は仕上げが残ってるぜ」
下がって行くトップドームの上でジョーは不敵にそう言った。
コックピットに戻ると、ジョーはすぐにバードミサイルの赤いボタンに取り付いた。
「ジョー、早くしねぇとメカがエスニタル市の街の上に落ちるわ」
竜が焦っていた。
まだ生き残りがいるかもしれないエスニタル市にこれ以上の被害は出したくなかった。
「任せておけ!」
ジョーは狙いを定めて、発射ボタンを押した。
掃除機メカは、エスニタル市の上空で爆発した。
降り注ぐ破片は最低限に抑えられた事だろう。
「やったな、ジョー」
健が握手を求めて来た。
「ああ、やった」
ジョーもそれに応えた。
『諸君、ご苦労だった。これから国連軍が救助活動に当たる事になっている』
南部博士がサブスクリーンに現われた。
「少しでも無事に生還する人がいるといいのですが…」
健が沈痛な面持ちで言った。
「もう少し早く対処が出来ていれば…」
『それは仕方がない。諸君は最短で出動したのだ。
 我々国際科学技術庁もギャラクターの出現位置まで予測する事は不可能だ』
「確かにそうですね。でも、俺達は後手後手に回っているのが悔しくてなりません」
『健の気持ちは解る。他の諸君も同じだろう』
南部博士はそう言ってスクリーンから消えた。
「こんなに悔しい事はねぇぜ。被害に遭った人々を守れた試しがねぇなんてよ」
ジョーが吐き捨てるように言った。
その言葉が科学忍者隊の思いの全てだった。




inserted by FC2 system