『狙撃手(スナイパー)G−2号』

科学忍者隊は夜中に招集された。
「君達の任務はベルク・カッツェが身に付けているペンダントを狙撃し、確実に破壊する事だ。
 ジョーに活躍して貰わねばなるまい」
南部博士が科学忍者隊を集めて、そう告げた。
「カッツェがペンダント?何です?それは…」
ジョーが訊いた。
「国際科学技術庁が開発したマントル計画の重要機密のデータが入ったペンダントだ。
 1時間前にベルク・カッツェ自らが変装して侵入し、ペンダントが盗まれたとの報告があった。
 データ自体はコピーがあるので、カッツェがしているペンダントは破壊してくれて構わない。
 とにかくギャラクターにデータを読み込まれる前に破壊する必要があるのだ」
「既にデータが読まれている可能性は?」
健はさすがにリーダーだ。
先を読んでいる。
「いや、そう簡単には読み込まれないように複雑に暗号化したデータだ。
 今すぐに解析される事はないだろうが、ギャラクターの科学力ではデータ解読は時間の問題だろう」
「…で?カッツェの居る位置をどうやって探り出せ、と言うんですか?」
ジョーが腕組みを解かぬまま言った。
「心配はない。ペンダントの在り処はこのレーダーに映る仕掛けになっている」
南部博士がレーダーを示した。
赤い点滅がある場所で停止している。
「ベルク・カッツェはこのポイントAX42の地点に居る筈だ。
 必ず探し出し、ペンダントを破壊して欲しい。
 諸君はジョーの援護を頼んだぞ!ギャザー、ゴッドフェニックス発進せよ!」
「ラジャー!」
科学忍者隊は速やかに出動した。

「カッツェはこの真下よ!」
レーダーを見つめていたジュンが叫んだ。
「各Gメカに分かれて偵察しよう。竜は待機だ」
健が的確に指示を出す。
「解っとるわい。おらはいつも留守番役じゃからのう…」
竜が自棄気味にぼやいた。
「ジョー、お前も暫くの間待機していてくれ。偵察は俺達がやる。
 連絡次第すぐ動けるようにメカ分身だけはしておいてくれ」
健は言い置くと、ジュンと甚平と共に席を離れた。
「カッツェが事の次第に気付いて、ペンダントをどこかに捨てて罠を張っていなけりゃ別だかな…。
 みんな、気を付けて行け!」
ジョーがその背中に声を掛けた。
「竜、カッツェが動き出さねぇとは限らねぇぜ。レーダーの監視を怠るなよ!」
彼は竜にもそう告げてコックピットを飛び出した。

ジョーはG−2号機で健達からの連絡を待った。
レーダーの反応は移動していないようだし、大掛かりな基地でもあるのか、それともどこかに潜伏しているのか…?
どちらにせよ、すぐに見つかる事だろう。
3人は別れて探索を行なっている筈である。
『こちらG−4号!兄貴、変な建物があるぜ!古い城みたいだ…』
『解った!ジョーも含めて集まってくれ!甚平、くれぐれも単独行動はするな!』
「解ってるよ…」
ブレスレットから甚平と健の声が流れて来た。
「よし!」
甚平の発信地点を確認して、ジョーはアクセルを踏んだ。

G−1号からG−4号までの4人は5分もしない内にその場へ集合した。
「臭いな…。手分けして基地への入口を探そう」
健が指示をして各々が散った。
『入口を発見したわ!中庭の古井戸から入れるわ!』
ジュンが告げて、全員がその場所に向かった。
「この下がギャラクターの基地になっているに違いないわ」
「ああ…。雑魚兵は俺達が引き受ける。ジョーはカッツェを追え!
 みんな、徹底的にジョーの援護をするんだ!」
「ラジャー!」
健が最初に古井戸に飛び込んで行った。
ジョー、ジュン、甚平の順にそれに続いた。
案の定、着地するとそこは鋼鉄で包まれたギャラクターの基地と化していた。
隊員達がすぐさまマシンガンで攻撃して来る。
それぞれが手持ちの武器や、自身の肉体で敵を倒し乍ら、前へと進んで行く。
「カッツェを探すんだ!」
「おう!」
4人は素早く進んで行った。

基地の中枢となる部屋に居たベルク・カッツェは侵入者の報告に「馬鹿者!」と叫んでいた。
「貴様達の警備が手ぬるいからだ!さっさと科学忍者隊を始末しろ!
 私はこのペンダントを分析する為に総裁X様の元へ戻らなければならんのだ!」
カッツェがそう叫んだ時にはもう遅かった。
忍者隊の4人が既にその部屋まで到達していたのだ。
ギャラクター隊士達がカッツェを守るように取り囲む。
カッツェは逃亡する体勢に入っている。
健達がすかさず敵兵と格闘を始めた。
「ジョー!」
健の声がする前に、ジョーの身体は動いていた。
ベルク・カッツェの胸元に光るペンダントに狙いを絞って、彼は右に跳躍した。
恐れ戦いたカッツェの僅かな隙を見逃す筈がない。
引き金を絞ると、確実に標的が弾け飛んだ。
ついでにカッツェの米神を狙ってやろうと思ったが、さすがに逃げ足が早い。
ペンダントが弾けた瞬間にカッツェは透明なカプセル状の物に飛び乗っていた。
「おのれ、科学忍者隊!今回は失敗に終わったが、このお返しは必ずやいつかしてくれようぞ!」
ジョーはカプセルに向かって発砲したが、例によって防弾仕様になっていた。
カプセルはあっと言う間に上昇し、視界から消えた。
「みんな、長居は無用だ。カッツェの事だ。恐らく基地の自爆装置を起動させている筈だ!」
健の言葉を機に全員退避を始めた。

こうしてジョーが受けたミッションは成功裡に終了した。
ゴッドフェニックスに戻ると、朝陽が昇り始めていた。




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