『羽根手裏剣の謎』

ジョーは甚平と組み、敵基地への潜入を計っていた。
健とジュンは別ルートから潜入しており、竜はゴッドフェニックスでスムーズに脱出が出来るように待機している。
目的は発電室。
此処を爆破するのが2人に与えられたミッションだ。
発電室までは敵に気付かれずに潜入出来たが、さすがに警備が緩いギャラクターも2方向からの侵入者に気付いていた。
「敵さんが現れやがったぜ。甚平、此処は俺に任せな。たっぷりとお土産を置いて行けよ」
「解ってるって!」
甚平は爆弾のセットに取り掛かった。
勿論、急いでセットを済ませてジョーに加担するつもりだ。
ジョーは既に身体を捻って華麗な動きで敵兵を倒し始めている。
彼が動く度にギャラクターの隊員が倒れて行く。
長身痩躯が縦横無尽に動き回り、跳躍する。
羽根手裏剣もエアガンも総動員した上に、ジョーは全身を使って敵を叩きのめしている。
長い足での蹴りが確実に決まり、肘鉄や拳が敵の腹に喰い込んで行く。
無駄な動きは1つもなく、彼の一挙手一投足が敵兵を完膚なきまでになぎ払っていた。
その獅子奮迅たる闘い振りに、甚平は爆弾を仕掛け終わった事を報告するのも忘れて見とれてしまった。
その時甚平の頭の上でヒュッと音を立て、物凄い勢いで羽根手裏剣が飛び抜けて行った。
甚平の後ろで敵兵が倒れた。
「甚平!何をボーっとしてる!?」
ジョーは尚も格闘を続けながら、怒鳴った。
「ごめん。ジョーの闘い振りに思わず見とれてたよ…」
甚平も戦闘を開始した。
「お土産の用意は済んだのか?」
「ああ…」
「なら、早く言え!長居は無用だ。脱出するぜ!」
「ラジャー!」
2人は敵兵を切り拓きながら、退却を始めた。
「健!発電室は5分後に爆発するぞ!」
ジョーはブレスレットに向かって叫んだ。
『こっちもOKだ!脱出を開始する』
健の揺るぎない声が答えた。

「ジョーって羽根手裏剣をどうやって投げてるのかい?」
ゴッドフェニックスに戻ると甚平が訊いた。
「おいら不思議で仕方がないよ。
 あんなに沢山の羽根手裏剣を片手だけで全部正確に命中させるなんて」
「どうやって…って言われてもよ」
ジョーはレーダーから眼を離さずに腕を組んだ。
「身体が勝手に動いちまうんで、説明出来ねぇな」
健が自席から立ち上がって2人の元にやって来た。
「俺もジュンも羽根手裏剣は持っているが、殆ど使わないし、ジョー程の扱いは出来ないからな。
 細かい指の動きと手首のスナップで操るんだが、あれだけの量を1度に正確に放つのは天賦の才としか言いようがないと南部博士も言っていた」
「へぇ〜。博士でも解らない事があるんだぁ?」
甚平がポカンと口を開けた。
「俺自身が説明出来ねぇんだぜ?特別な訓練を受けた訳じゃねぇしな。
 いくら博士だって解りっこねぇだろうよ」
「甚平が小さい頃から忍者のような動きが出来たのとおんなじよ」
ジュンが甚平のヘルメットに優しく手を乗せた。
「あ、そっかぁ〜」
甚平は取り敢えず得心が行ったようだった。
「おいら、ジョーのかっこ良さに思わず見とれてて、怒られちゃったんだよ」
バイザーの中に手を入れて、鼻を掻いた。
「そりゃあ、そうだろ?任務中に余計な事は考えるな。生命取りになるぜ」
「ジョーの言う通りだ。甚平、任務中は注意を怠るな。
 俺達はいつも生と死の狭間で闘っているんだ。いいか、絶対に忘れるな!」
「解ったよ、兄貴。気をつけるよ」
そう答え乍ら、甚平は内心、
(ジョーの兄貴がかっこ良過ぎるせいで、兄貴にまで説教を喰らっちまったよ…)
と呟いていた。
「そろそろ帰還じゃ。海に潜るぞい」
基地が近づいた事を告げる竜の言葉に、全員がそれぞれの座席へと戻って来たる衝撃に備えるのであった。
西の空に陽が沈もうとしていた。




inserted by FC2 system