『鉄格子からの救出作戦』

怪しげな洞窟に入ったリーダーとサブリーダーは、仏像の首に次から次へと攻撃を受けていた。
手で払い落としたり、跳躍したり、と2人共それを片付ける為に足止めを喰った。
ジョーは冷静にゴッドフェニックスに引き返して出直す方がいいと提案したのだが、健はそのまま突っ走って1人向こう見ずに先へと進んでしまった。
「健!」
ジョーが止めても聞く男ではない。
父親の夢を見て冷静ではなくなる健の気持ちはジョーには解らないでもなかった。
もう吹っ切れている物だと思っていたが…。
(無理もねぇ。俺だって10年経っても8歳の頃の夢に魘(うな)されるんだからな…)
ジョーは仏像の首がもげた部分から噴き出したマグマのような炎に行く手を遮られ、別の道を探るしかなかった。
洞窟の外まで一旦退却し、ブレスレットに呼び掛けても健からの返答はない。
「竜!聞こえるか?健の正確な居場所を割り出してくれ!あいつ突っ走りやがった!」
『ラジャー!』
ゴッドフェニックスで待機している竜からはすぐに返答があった。
『そこから北西に向かって320mの地点じゃわ!』
「解った!」
ジョーは素早く走り出した。
『ジョー、あのでかい変な仏像が動き出したぞい!』
「全員戻るまで、レーダーでそいつの位置を把握しておいてくれ!」

彼が健を見つけた時、網の目のようになっている鉄格子の中に倒れていた。
意識を失っている。
ジョーは慎重にその鉄格子に小石を投げてみた。
小石は小さな光と共にバチンと音を出して、砕け散った。
鉄格子には高圧電流が流れていたのだ。
(思った通りだ…。この鉄格子の制御装置を破壊するしかねぇ!)
ジョーはそれらしき物を探す為に周囲を注意深く見回し乍ら、ブレスレットでジュンと甚平を呼び出した。
「こちらG−2号!健が捕らえられた!救出を手伝ってくれ!
 怪しげな仏像がある洞窟は避けて来い!」
『ラジャー!』
ジュンと甚平が同時に答えた。
彼女達が到着する前に、ジョーは制御スイッチらしき物を発見した。
スイッチには蓋が付いており、鍵が掛けられていた。
拳で叩き割ろうとしたが強化ガラスになっているのか、割る事が出来なかった。
ジョーはペンシル型の小型爆弾をカッと投じてみたが、爆弾ではびくともしない。
今度は羽根手裏剣を取り出し、鍵をこじ開けようとし始めた。
「ジョー!」
その時ジュンと甚平が到着した。
「これがこの鉄格子の制御スイッチだろう。爆弾では蓋が開かねぇ。
 甚平は他に制御スイッチが無いか探してくれ!
 高圧電流が流れている。鉄格子には触るんじゃねぇぞ」
「ラジャー!」
「羽根手裏剣じゃ駄目だ…。ジュン!お前、ヘアピンみてぇなもんは持ってねぇか?」
「あるわよ」
ジュンがそれを取り出した。
「さすが女の子だな…」
ジョーは呟くとそのヘアピンを鍵穴に差し込んだ。
指先の感覚と耳を頼りにピッキングを始める。
「くそっ…」
プロは数秒から数分で鍵を開けると言われている。
それで開かないようなら危険を考えて諦めるのだ。
ヘアピンは余り良い道具だとは言えないが、ジョーは諦める訳には行かなかった。
「ジュン。健の様子はどうだ?」
ジョーは鍵穴に耳を当てるようにしながら訊いた。
「まだ気を失っているわ…」
「ジョー、スイッチはそれだけみたいだよ」
甚平が戻って来た。
「開いたぜ!2人共、鉄格子から離れろ」
ジョーは漸く蓋を開け、スイッチを押した。
すると鉄格子がガタンガタンと音を立てて、上昇し始めた。
「健!」
ジュンが始めに中へ飛び込む。
ジョーは健の頬を軽くビンタした。
「駄目だ。意識が戻らねぇ…」
「ジョー、竜を呼ぶかい?」
確かに健を運ぶのには力持ちの竜が適任だが、今は待っている事は出来ない。
「いや、仏像の化け物が動き出したんだ。時間がねぇ。健は俺が担いで行く。
 2人は周囲を警戒してくれ。ゴッドフェニックスに戻るぞ」
ジョーは自分と同じ体重の健を左肩と腕で担ぎ、彼の背中に右手を添えた。
万が一の時の為に右腕を使えるように空けておくのは彼の鉄則だった。
エアガンは右腰にある。

ゴッドフェニックスに戻るとジョーは健をコックピットに投げ出し、竜に仏像を追うように指示をした。
「ようし、おらに任せとけ!」
「ふぅ…。重かったぜ、健…」
ジョーが呟いた。




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